「防衛費予算増」が追い風…NEC、宇宙・防衛を安定収益基盤に
「この数年で当社が目指す姿がクリアになってきた」とNECの森田隆之社長は語る。強みの一つに挙げるのが宇宙政策や経済安全保障でクローズアップされる宇宙・防衛や海底ケーブルなどの先端技術と、サイバーセキュリティーなどのITサービスとの相乗効果だ。森田社長は「この形を強化することで大きな絵が描ける」と展望。「企業には国籍がある」との見地から「日本のテクノロジー会社として(世界的にも)期待される姿」に自信を見せる。(編集委員・斉藤実) 【グラフ】NECの航空宇宙・防衛事業の業績詳細 NECの収益のけん引役は現在、旺盛なデジタル変革(DX)需要に応えるITサービスであり、生成人工知能(AI)の台頭で勢いは増している。 他方、NECならではのDNA(遺伝子)が凝縮されているのは社会インフラ領域だ。同領域の収益の大半は通信事業者向けネットワークサービスが稼ぎ出している。ただ最近は、経済安全保障の高まりを受け、社会インフラ全体の収益向上の目玉となっているのは航空宇宙・防衛(ANS)だ。防衛予算増で大型受注が相次ぐ。 防衛装備品などの分野は長らく“稼ぐ事業”でなく、低収益が当たり前だったが、政府の方針で先端技術領域については最大15%の利益率が許容されるようになった。 これはNECにとって追い風だ。ANSの調整後営業利益は着実に伸長し、5カ年の中期経営計画の最終となる26年3月期までの3年間の平均成長率は28・4%と高水準で推移する見通し。26年3月期には売上高は4000億円以上、調整後営業利益率(不採算案件などの特殊要因を除く)は9・3%を目標に据える。 森田社長は決算発表などで防衛事業の利益率について「12―13%を目指したい」と語るなど、ANS事業を安定した収益基盤として成長させる方針だ。 経済安全保障の波及効果は防衛装備品だけにとどまらない。NECの原点ともいえるネットワーク事業もその役割や事業価値などが変わってくる。 注目は海底ケーブルと、政府が検討中の(軌道上で多数の小型衛星を一体で機能させる)衛星コンステレーション構想。森田社長は「衛星間光通信などで我々の技術は有用。当社は宇宙の領域は途絶えることなく研究開発を続けてきた。衛星と海底ケーブルとの通信はデジタルインフラの神経網として取り組む」と力を込める。 ネットワーク事業は通信事業者によるインフラ投資で収益が左右される。その意味で従来は“寄らば大樹”と言った面もあった。直近では第5世代通信(5G)市場の立ち上がりの遅れが痛手となり、5G基地局の海外展開で出はなをくじかれてしまった。だが、経済安全保障の高まりを追い風に通信の技術者1000人以上をANSにシフトさせるなど、ネットワーク分野の底力をテコに逆に戦略アップを図っている。 中計2025は25年度末に向けて総仕上げに入るが、ゴールではなく「中間点」(森田社長)。森田社長は「グローバルのトップクラスの企業に並ぶような絵が描ける段階にきた」と次期中計への意欲をにじませる。