メッセージがびっしり書き込まれた車 被災地・大槌町の「走る震災遺構」13年目の役割 #知り続ける
■車体にびっしりメッセージ「がんばれ!」
モスグリーンの小さな車体。ルーフは白く塗られ、丸いヘッドランプとクラシック調のメッキグリルが特徴の可愛らしい車だった。車を見た佐々木さんは驚いた。車体には子供たちが書いたと思われる幼い文字で、メッセージ がびっしりと書かれていた。「私たちも応援しています」「とにかく生きのびてください」「けんさんがんばれ!」。メッセージを書いたのは、東久留米市立南町小学校の児童たちだった。学校にメッセージをお願いしたのは荒井さんだった。「被災地に励ましのメッセージを送りたいと考えながら車を見ていたら、そうだ!いっそのこと車に書いちゃえ!って」と笑う。サンバーは「健さん号(Go!)」と名付けられ、避難所の人々が生きるために必要な物資を荷台一杯に積み込んで、被災地を駆け巡った。「それまで避難している人の車を借りて物資を運んでいたから本当に助かった。夏には避難所が酷暑になるので扇風機を積んで回った。何ヶ所の避難所を回ったか覚えていないくらい」 と佐々木さんは震災当時のサンバーとの日々を振り返った。
■来る人来る人が車体にメッセージ
東久留米市の子どもたちが書いたメッセージは、風雨にさらされてやがてほとんどが消えてしまったが、代わりに大槌町を訪れる復興ボランティアのほか、地震や津波の研究者、取材に訪れたマスコミ関係者など、ありとあらゆる人々が復興に寄せるメッセージを書き残すようになった。炊き出しに訪れた衆議院議員2年目の小泉進次郎氏もそのひとり。「何か必要なものは?」と小泉氏から問われた佐々木さんは「必要なのは被災地を思ってくださる皆さんの愛と、復興には知性が必要です」と答えた。それを聞いた小泉氏は、油性インクを手にすると車体に「愛と知性」と書き入れた。佐々木さんは、車体に書かれたメッセージを見るたびに、復興の日々の中で出会った人々との『つながり』を思う。「外から来た人たちが大槌にはいいところがいっぱいあると、車に書いてくれている。僕らが気づかなかったこともあるし、あらためて教えてもらったこともある」。