山口恵以子「91歳の母を自宅で看取り、今は要介護5の兄と2人暮らし。築35年の家は、シロアリ駆除、床下の補修と大規模修繕」
◆兄の介護ベッドを階下に移動して いまは私が家の主のようになっていますが、母の生前に「将来、この家をどうするか、誰が継ぐか」という話をしたことはありません。次兄は家を出て所帯を持ち、長兄は病気になったため、なりゆきで私が継いでいるのです。 最近は、朝起きると、長兄のおむつを取り替えるのがルーティン。認知症になった母の介護を18年経験し、母の下の世話はできたけど、兄のことは無理と思っていました。でも切羽詰まると、やるしかない。いまはもう慣れました。 わが家は3階建てで、2階に玄関、リビングダイニングとキッチンがあり、3階に私の自室をふくめて3部屋という間取りです。1階に物置部屋と車庫があります。 いま私が取材を受けているのは、リビングダイニング。私の後ろにドーンと置いてあるのが、長兄の介護ベッドです。このベッドは、3階の兄の部屋にあったものを最近移動しました。
11歳上の長兄は、2017年からの2年間に3度、脳梗塞を発症。短期記憶が著しく低下して、呂律(ろれつ)が回らなくなり、歩行も不自由になりました。 その前から糖尿病を患い、合併症による腎不全で人工透析も受けています。それでも、昨春までは、ヘルパーさんに支えられて3階の自室への昇り降りができていたので、週3回の人工透析などで外出するときは、1階まで歩いて降りて、送迎車に乗っていました。 ところが昨年4月、家の前で転倒して大腿骨を骨折。手術したものの、階段の昇り降りができなくなってしまって。現在は、立位はとれるけれど自力歩行が難しく、日常の移動は車椅子になりました。 そこで急遽、昨年末、2階から1階へ降りる内階段に、電動昇降機を取りつける工事を開始。内階段の幅が規定より短かったため、区の助成金がおりず、自費で70万円ほどかかりました。 でも、兄のベッドを2階におろしたことで、そこから1階までは電動昇降機を使える動線ができた。おかげで転倒リスクも減りましたし、ヘルパーさんも作業しやすい。 3階にある私の部屋のドアは、何かあったときに気づけるようにいつも開けてあります。お金はかかりましたが、安全で便利になって、一件落着となりました。