「早い!便利!助かる!」問屋業界の常識を打ち破るトラスコ中山の戦略
さらに4年前には、これまでの戦略を進化させたサービスをスタートする。商品を買い手の倉庫で保管するサービス「MROストッカー」だ。 神奈川・南足柄市の取引先「守山乳業」の製造現場で、ゴム手袋が切れた。製造スタッフが向かった先は工場の奥にある倉庫。実はここに、リクエストがあった商品をあらかじめ置かせてもらっているのだ。 スマホアプリで処理をすれば、必要な時に必要なだけ買える。参考にしたのは「富山の置き薬」。ほしい時にほしい分だけどうぞという、まさに「究極の即納」システムだ。 「在庫がなくなったらすぐに買えるのでとても便利です」(「守山乳業」担当者)
客も社員も満足させたい~手厚すぎる?驚きの制度続々
トラスコ中山の社員の平均年収は700万円以上。さらに特別収入が得られるなど、社員のために他にはないさまざまな仕組みを作っている。 幸手支店の嘉数遥香は、普段営業として取引先を回っているが、休日には自社の倉庫で働いている。利用しているのは「社内副業制度」。希望すれば、休みの日に普段とは違う部署で働けて、別に給料がもらえるのだ。 「海外旅行に行きたいのでその資金を貯めようと。丸1日ではなく半日でも働けるので、空き時間にあった働き方ができるのもメリットだと思います」(嘉数)
一方、最近では導入している企業が目につく社内託児所だが、トラスコ中山が他と違うのは保育士を正社員として採用していること。預ける相手が同僚なので、親も安心だ。 「仕事のことが分からない人に話しても状況を理解してもらいにくいと思いますが、ここは仕事のことも分かってくれているので、相談しやすいです」(利用者) 社員食堂などで働く料理人や栄養士もトラスコ中山は正社員として雇っている。 『おいしい物を食べさせたいと思っている人に包丁を握らせる。愛情を込めて社員の健康を考えてくれる人に料理を作らせたい』(中山) この他にも、「有給休暇は何日でも無制限に積立できる」「不妊治療のために1年間、休職することができる」などの仕組みが。新入社員に対しては、「新社会人支度金制度」として、実家から通う場合は10万円、1人暮らしの社員には20万円を現金で支給している。 「社会人となって家具や家電など必要なものが多いので、とても助かりました」(2024年4月入社予定・佐々木亜優) ~村上龍の編集後記~ 買い手からすると、品揃えも在庫も多ければ多いほどいい。在庫は少ない方がいいというのは売り手の理論。「MROストッカー」。ものづくり現場で使用される工場用の商品を、事前に棚に置いておく納期ゼロの即納サービス。置き薬の工具版。「この会社は何のためにあるのか」というのが原点。日本の製造業のために役に立たなければという思いで、いろんなことを改善したり、改革した。趣味は仕事くらいしかない。毎朝午前4時ごろに起床。考え事は山のようにあるけど悩み事はゼロ。幸せな人だと思う。 <出演者略歴> 中山哲也(なかやま・てつや)1958年、大阪府生まれ。1981年、中山機工入社。1984年、取締役就任。1994年、社長就任。 ※「カンブリア宮殿」より