57億円ともいわれたフェラーリ「250テスタロッサ」の落札価格は…。世界を転々としたヒストリーを紹介します
57億円超えが予測されるも・・・・・・
2010年までに、モンテベルデ氏はNo.0738 TRでのレース活動に終止符を打つことを決意。2013年の最終的な売却に先立って「フェラーリ・クラシケ」に愛車を託し、完全なレストアと正統性の認証が行われることになった。 フェラーリ・クラシケは総額65万ユーロ以上を受領し、このテスタロッサのために均整のとれた新ボディを製作、No.0738 TRを1958年当時のオリジナルに完全に戻した。またレストアを完了したのち、フェラーリ・クラシケはこの個体がオリジナルのエンジンとギアボックスの両方を保持している数少ない現存車両の1つであることを確認する「レッドブック」も発行した。 そしてそれから約10年間、No.0738 TRは著名なアメリカのコレクションに譲渡され、「スクーデリア(厩舎)」の仲間たちと休息をとっているとのことである。 250テスタロッサはなんらの誇張もなく、究極のフェラーリとして広く認められている。スクーデリア・フェラーリがスポーツカーレースでの復活を遂げた唯一無二の象徴であり、エンジニアリングとデザインにみごとに融合した美しさで、史上最高のレーシングスポーツカーの1つとなった。 そしてサザビーズは、このクルマただ1台だけを商品とするオークションを、ミシガン州デトロイトにて開催することを決定。入札者が相互に提示価格を知ることができない「シールド・ビッド(Sealed Bid:封かん競売)」の形式をとり、オークションの通例であるエスティメート(推定落札価格)が公表されることはなかった。 こうして2024年2月22-24日には、主にオンラインで秘密裏に競売が行われたはずなのだが、公式WEBページでは締め切りから数日を経ても「upon request(価格応談)」のまま。つまりは最低落札価格に届かず、締め切り時点では流札。現在でも販売継続中と推測される。 250テスタロッサのようなクラスのクルマは、有力コレクターや愛好家同士の個人的な譲渡がほとんどで、国際クラシックカー・マーケットに売り物が出る事例は少ない。 今回のサザビーズ・シールド出品を前に、さる筋では3800万ドル、日本円に換算すれば57億円を超える落札価格もあり得るとの予測を立てていたようだが、残念ながら現状では成約には至っていないものと思われる。
武田公実