2022年6月に始まった線状降水帯「予測」情報 活用する上での注意点は? #災害に備える
次々と発生する積乱雲が帯状に並び、同じ場所を通過、停滞することでできる「線状降水帯」。ひとたび線状降水帯ができると、数時間にわたって同じような場所で大雨が降り続くことから、豪雨災害が発生する危険度が急激に高まることがある。 気象庁は、このような状況になるおそれがある場合に、人々に早めに危機感を持ってもらうのを目的に、2022年6月1日から線状降水帯の「予測」情報の提供を始めた。線状降水帯が発生する可能性がある時間帯の半日前~6時間前に、気象庁のホームページなどで見ることができる「気象情報」の中に文言を盛り込む形で発表している。 気象庁は「発表された場合は、ハザードマップ、避難所、避難経路の確認などを行って、避難しなければならないとなった時にすぐに避難できるようにしておいてほしい」と呼びかけている。
2021年開始の「発生」情報との違いは?
「平成最悪の水害」となった2018年の「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」や熊本県を流れる球磨川が氾濫するなどして大きな被害が出た2020年の「熊本豪雨(令和2年7月豪雨)」など、近年、多くの災害をもたらした豪雨の大きな要因となっているのが「線状降水帯」だ。たびたびメディアでも登場している言葉だが、実は、雨の強さや降雨域の幅や長さについて、専門家の間でも様々な定義が使われていて、厳密なものがあるわけではない。 ただ、気象庁は予報用語で「線状に伸びる長さ50~300キロ程度、幅20~50キロ程度の強い降水を伴う雨域」と定義。こうした線状降水帯が形成されて、非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を知らせる情報として、2021年6月から「顕著な大雨に関する情報」の提供を開始した。言い換えれば、線状降水帯の「発生」情報だ。 そして1年後の今年6月からは、この発生情報の発表基準を満たすような気象状況になる可能性が高い、と気象庁が判断した場合に予測情報が発表されるようになった。 予測情報は、原則として全国を「北海道」「東北」「関東甲信」「東海」「北陸」「近畿」「中国」「四国」「九州北部」「九州南部」「沖縄」の11ブロックに分けた地方単位で出される。他の多くの防災気象情報と比べると対象が広域になっているのは、現在の技術的に確度の高い予測を行うことが難しいためだ。 予測精度が低いため、発生する時間帯の言及の仕方も「午前中」「午後」「日中」「夜」「未明から明け方にかけて」などのように幅を持たせた形となる。 これらを踏まえた発表の文言は、例えば次のようなものになる。 「九州北部地方では、●日夜には、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があります」