年が明けて「韓国の世論」に大きな変化が…尹錫悦大統領「逮捕状発付」で積み重なった「法律違反」の怪
法律違反を重ねた逮捕状
ところで、尹大統領に対して内乱罪を理由とした逮捕状が発付されたことは広く報道されているが、これは実は法律違反をいくつも重ねたものなのだ。 韓国では大統領などの高い地位にある公職者に対しては、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)というところが、普通の検察とは別の扱いで捜査することになっている。 この公捜処は、検察を弱体化するために文在寅政権の時に作られた新たな捜査機関だが、この高位公職者犯罪捜査処には内乱罪の捜査権限がもともと設けられていない。韓国の法律では、内乱罪に関する捜査権限は警察にしかないのだ。 ところが、今回、公捜処は、それにも関わらず、内乱罪を理由として尹大統領に対する逮捕状を取ろうとして動いた。 おかしなところはそればかりではない。公捜処は、大統領・閣僚・国会議員・将官級将校など高位公職者に対しての捜査はできるが、起訴できる対象は判事・検事および警務官以上の階級の上級警察官に限られることになっている。公捜処は尹大統領を捜査することはできるが、捜査を進めた後に、起訴に進もうとすれば、ソウル中央地検に起訴を求めなければならないのが法律の規定だ。 高位公職者犯罪捜査処がこの事実に気づいていなかったなんてことは、さすがにありえないと見るべきだが、このような手続き民主主義が全く守られていないのだ。 法的には権限が認められていないのに、権限があることを前提として、公捜処は逮捕状を裁判所に発付させようと動いたのだ。 そもそも刑事訴訟法上で定める被疑者の拘束期間は、警察が最大10日、検察が最大20日となっているが、高位公職者犯罪捜査処には拘束期間の定めがない。 日本の最高検察庁に相当する韓国の大検察庁と公捜処は、最大拘束期間を20日にするとの協議を行ったと報じられているが、そもそもこんな話し合いができる法的根拠がないのだ。
党派的な司法判断
違法行為はこれだけではない。 法律に基けば、公捜処の検事が起訴した事件の一審裁判は、ソウル中央地裁が管轄することになっている。となれば、仮に公捜処に大統領に対する逮捕状の発付を求めることが許されているとしても、逮捕状を求める先はソウル中央地裁になるしかないことになる。 ところが、公捜処は逮捕状の請求をソウル西部地裁に求めた。ソウル西部地裁は、共に民主党と関係の深い判事が多数所属しており、令状を発布した李舜衡(イ・スンヒョン)令状担当部長判事は左翼系判事グループのウリ法研究会の出身者として知られる。これまた手続き民主主義を無視した、実に党派的な動きだと言えるだろう。 おかしなことはまだある。 発付された捜索令状には、今回の件では刑事訴訟法第110条と111条の適用の例外にすると明記されているのだ。 この二つの条項は、それぞれ「軍事上の秘密に関する場所」と大統領の「職務上の秘密に関する場所」は、責任者などの承諾なしには押収または捜索できない、という内容だ。 大統領府は当然ながらこの場所にあたり、大統領府にいる大統領の逮捕・拘束もできないことになる。 法律的にはできないことがわかっているのに、「今回は例外だ」と勝手に言い出したというのだ。 こうしてみれば、法手続き上無茶苦茶なことが幾重にも重ねられたとんでもないことが、今韓国で進行していることがわかるだろう。