北海道地震被災ファン200人と森保Jが心の交流。集合写真に込められた願い
幸いにも仕事の合間につまもうと、チョコレートやクッキーなどは買っておいた。自家発電機で作動していた自動販売機と幸運にも巡り会い、そのミネラルウォーターとともに空腹を満たした。停電中のホテルに戻り、仕事の続きをしている間にパソコンのバッテリーも切れた。 約30時間ぶりに食事へとありつけたのは7日午前8時すぎ。せめてもの、という思いを込めて宿泊先のホテルが無料で用意してくれた生の食パン、ボイルされたソーセージとブロッコリー、コンソメスープ、そしてトマトジュースを口に運びながら感謝の思いが何度も込みあげてきた。 そして、通りをはさんだ向かいのホテルが停電から復旧。宿泊者以外でも充電が可能だと聞き、スマートフォンとパソコンのバッテリーを100%にできた。7日の練習場所を確認して、取材へ向かった。紅白戦が終わりを告げた直後だった。 「一緒に写真を撮りましょう!」 槙野が音頭を取る形で、バックスタンドに駆けつけていた約200人のファンやサポーターへ、クールダウンを終えた選手たちが手を振りながら近づいていく。子どもたちも含めた約200人の前でシャッターに収まった理由を、槙野は笑顔で説明する。 「サッカーを介してどれだけ元気を与えられるかはわからないですけど、練習場に来て僕たちにエールを送ってくれた北海道の方々に対して、最後に触れ合うなかで一緒に写真を撮る、あるいはひと言、ふた言話すことで一歩踏み出せる勇気をもってもらえるきっかけを作っていければ、という思いでああいう行動を取らせてもらいました」 JFAによれば、森保ジャパンは当初の予定通り8日午後に大阪へ空路で移動して、仕切り直しの初陣となるコスタリカ戦へ準備を整える。帰路のタクシーの窓越しに見るすすきのにはまぶしい灯りが戻り、宿泊ホテルの停電と断水も解消されていた。 そして、スマートフォンでチェックした槙野のインスタグラムには約束通りに、撮影されたばかりの集合写真が「たくさんの北海道の方に元気や希望を」というメッセージとともにアップ。日付が8日に変わる時点で、2万件を超える「いいね!」が寄せられていた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)