だんだん記憶があいまいになる私。でも、月組配属前の、入団1年目の星組公演『パパラギ』の振りだけは覚えてる
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第73回は「私の記憶」のお話です。 (写真提供◎越乃さん 以下すべて) 【写真】宝塚時代若かりし頃 * * * * * * * ◆どうでもいいことだけを覚えています 仕事で何度か訪れている土地にまた行くことになりました。 2、3度訪れているのに、その土地の景色が浮かびません。 訪れたのは2、3年前のはずなのに。 私の記憶はいつも肝心なことは忘れ、どうでもいいことだけを覚えています。 覚えているのは、宿泊した駅前のホテルの朝食バイキングでした。 朝食を取っているときにすれ違ったカップルの男性が持っていた、てんこ盛りのソーセージのお皿。 優に20本はあったかと思われるソーセージだけが乗ったお皿に目が釘付けになりました。 ん!? 一緒にいたマネージャーも心の声は同じでした。 「きっと彼女と食べるのよ」 「それにしても多くないか!?」 などと話し観察していると、カップルの彼女はそのソーセージを見ても何事もなかったように自分の取ってきた朝食を食べ始めました。 え!? 「普通彼氏があんな取り方したら何か言うよね?」 「びっくりしすぎて笑っちゃうかも」 「毎回あの山盛りなんじゃない?」 「どんだけ好きなんだ!?」 勝手なことを話しながらも、気になって仕方ない私達。
◆綺麗さっぱり忘れていく しばらくすると彼氏が立ち上がりました。 そしてあろうことかまた手に持って帰ってきたお皿にはソーセージの山が! マジか!? 笑いをこらえるのに必死な私達と、全く動じない彼女。 「笑うか突っ込むかしてよ」 「どんだけ寛大なんだ!?」 その後も、 「罰ゲームなんじゃないのか」「バイキングで1人が取ってもいいソーセージの数は何本だと思うか」「何本だったら食べれるか」などというどうでもいいやり取りをしたという記憶。 なぜかそんな記憶だけが残っています。 必要な情報は大概出てきません。 つい最近も、トークショーで宝塚時代のことを質問していただきましたが、ほぼ覚えていません。 昔演じた役さえも、そんな役名だったっけ?としばらく悩むほどに。 キャパオーバーで、1つの公演が終わると綺麗さっぱり忘れていくようです。 先日、TAKARAZUKA SKY STAGEで私がまだラインダンスをやっていた頃の作品をやっていたようで、ラインダンスの位置を教えてくださいと尋ねていただきましたが、当然記憶なし。 一番ガタイのデカいのがおそらく私です。