「私を止めてほしい」―ストーカーからのSOSメールが届いた 専門家は治療が必要と指摘
8日、新宿区のタワーマンションで女性が刺殺された事件で逮捕された男には、ストーカー規制法違反の疑いでの逮捕歴があるという。警察が介入してもなお、悲劇を完全に防ぐことができない以上、当事者には自衛のための知恵が求められるということだろうか。 【一つでも当てはまったら危険かも…】ストーカーの気質の特徴とは 「診断チェック」
長年、ストーカー問題やDVなどの相談に対処してきたNPO法人ヒューマニティの小早川明子理事長は、著書『「ストーカー」は何を考えているか』で、その危険度の判断方法を解説している。 前編では「行動レベル」での判断について見てきたが、後編では「心理レベル」での判断について見ていこう(以下、『「ストーカー」は何を考えているか』第4章 危険度をどう見分けるか より)。【前後編の後編/前編を読む】 ***
心理レベルでの危険度
「前編」は「行動レベル」での危険度の判断ですが、同時に「心理レベル」での判断が重要です。 それは加害者のメールの文言である程度わかりますし、加害者と被害者の関係を注意深く観察すれば判別できる。さらに妄想の有無など精神面に潜む危険を見抜くことができれば、重大事件は防ぐことが可能です。 加害者の内面の危険度を見る時、私は、(1)リスク(risk=可能性)→(2)デインジャー(danger=危険性)→(3)ポイズン(poison=有毒性)という三つの段階を設定しています。
(1)の段階では被害者の対応次第でよい方向に向かいますが、(2)の段階では危険性が雪だるま式にふくれあがり、警察の警告、カウンセラーや弁護士が間にはいるなど第三者による介入が必要です。そして(3)は、加害者の存在自体が毒、加害者はストーキング病と見てよく、最悪、殺人事件も起きかねないもっとも危険な段階です。一刻も早く自分が逃げるか、相手を排除するか、少なくとも加害者の行動を見張らなくてはなりません。 何も対策を講じなければ、危険度は(1)→(2)→(3)と進むだけで、いくら神頼みをしても逆方向には行かないのです。 破恋型ストーキングでは、被害者が別れを告げると、加害者はまず「やり直したい」と言います。この時点なら、(1)のリスク対応でほぼ対処できます。具体的には、貸し借りは清算した上で、はっきり「別れたい」と言う。この時は二人にならない環境、例えば喫茶店などで話をすることです。そして以後、二人きりなることは避けます。また、二人の別れ話をLINEなどで他人に知らせたりしないことです。 しかし、電話やメールの文言が「責任を取れ」「誠意を見せろ」「消えてほしい」「死んでやる」など切迫してきたら、加害者の心理は(2)の段階に進んでいて、被害者が対応しても効果はなくむしろ危険です。私のような第三者が早急に加害者と面談するか、あるいは弁護士が代理人になるなど、両者の直接的接触を避けて話し合いを始めます。と同時に、家族、会社、学校など、身近で大切な関係者に報告をしておきます。何かあった時は直ちに対応できる態勢を作ってもらうのです。そして、できれば緊急時に身を隠せる場所のめどをつけておきます。いつでも警察や弁護士、時には相手の身内に介入をお願いできるようにこれまでの記録も用意します。 さらに文言が「呪ってやる」「殺してやる」「火をつける」「人生を破壊する」などの脅迫になれば、(3)の段階に達している。もはや警察力によるしかありません。 ストーカーの心理の危険度は、行動からも推し量ります。待ち伏せや名誉毀損は(2)、複数回の待ち伏せや住居侵入、職場への嫌がらせ、追いかけ、復讐行為の依頼などが起きていたら(3)と見なし、証拠を採集して直ちに警察に被害届を出します。 (2)と(3)においては、私はカウンセラーとして加害者と面談し、ストーキングをやめるように説得しますが、それでも聞く耳がなければ、(2)では最低でも警告の申し出、(3)であればストーカー規制法違反か脅迫罪で告訴して逮捕してもらうように指示します。