「戦える自衛隊」へ処遇改善が急務 職務の厳しさ軽減できないなら…報酬増やすしかない 恩給制度や退役処遇は米軍を参考に
【自衛隊を支える改革 小笠原理恵】 10月の衆院選で、自民党は公示前256議席から65議席減の191議席しか獲得できず、大敗した。石破茂首相(総裁)が勝敗ラインとした「自公与党で過半数(233議席)」も達成できず、政権を維持するために国民民主党に協力を要請している。 【ひと目でわかる】過去最悪レベル…自衛官の採用達成率 無所属で当選した「非公認」議員の自民党会派入りや、国民民主党との「部分連合」などで議会多数を確保しない限り、政権基盤は安定しない。少数与党では、予算も法律も迅速に成立させられない。日本を取り巻く安全保障環境が悪化するなか、厳しい政権運営が続くのは間違いない。 国民の生命と財産を守るために「戦える自衛隊」になるには、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンドオフ防衛能力」や、ミサイル防衛システムによる迎撃などの「防空ミサイル能力」を向上させる必要があるが、それだけではダメだ。 ウクライナに軍事侵攻したロシアをみても、兵士と弾薬などの補給不足で後退している。人がいなくては戦えない。 自衛官の募集環境は危機的だ。現員維持のため定年延長を繰り返しているが、高齢化が著しい。自衛隊の人的基盤の強化も、防衛整備計画の中に盛り込まれた。職場の魅力化を進めるため、老朽化した設備は2027年度までに修繕や建て替えをする予定だ。ボロボロの隊舎や庁舎では、入隊に色よい返事は聞けない。 衆院選の投開票直前の10月25日、石破首相を議長とする「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」の初会合が首相官邸で開かれた。 自衛官の処遇・勤務環境だけでなく、生涯設計に対する方策も検討項目に入ったことは歓迎だ。自衛官は定年退職年齢が低い。退職後も現役時代の知見や技能をいかして、社会で活躍できる仕組みが必要不可欠だ。 米軍では、軍人になって20年間働けば恩給が付く。さらに軍属となって米軍をサポートする職務に20年携わると恩給は2倍になる。これ以外にも、医療費減免など特典は多数ある。米軍の恩給制度や退役軍人への処遇を、ぜひ参考にしていただきたい。自衛隊の職務の厳しさは軽減できないのであれば、報酬(メリット)を増やすしかない。 ■衆院選で自民大敗、関係閣僚会議の存続不安