「基本給3万円増」「初任給も23万円→26万円に」米国子会社も絶好調なくら寿司、大胆賃上げが話題に。その狙いとは?
ここで計算してみよう。日本のくら寿司には従業員が約1700人いる。平均年齢は31.5歳で、同社の平均年収は約460万円だ。 1700×3万円×12≒6億1200万円となる。つまり人件費が基本給のアップ分で6億円ほど上昇する。また1人当たりは36万円(=3万円×12)の年収増となる。これを2つの観点から比較する。 まず1つ目は経営成績の観点から。現在くら寿司は2024年第1四半期が最新の発表内容となる。そこで見ると、売上高は前期の513億円から561億円に急増。
前期の営業損失から、営業利益も17億円に急増している。 四半期の数字について、「厳しい環境は続いているものの、人流の増加に伴う売上高の増加等により、全般的に好調に転じてきております」「旺盛なインバウンド需要を取り込むべく、今後とも都市部を中心に積極的な店舗展開を図ってまいります」と前向きな言葉を決算短信で述べた。先行投資がかさんでいる北米事業も損失幅がやや縮小した。 経営成績から見ると、この基本給アップは訴求性を向上させるためにも、または業績の結果から見ても、しかるべき施策のように思われる。
次に2つ目の観点から。他の値と比べてみよう。同社の平均年収は約460万円で、これが月に3万円のベースアップと紹介した。まず日本平均の給与所得者の平均は令和4年分で458万円。これに対して、上場企業の給与平均はさまざまな調査があるが640万円ほどを示す結果が多い。 なお、私は年齢を無視しているので、強引な分析・比較であることは承知している。ただ、同社はもともと日本の平均給与なみの水準であり、上場企業平均からすると低い水準になる。どこまでを飲食業とカウントするかで結果は異なるが、飲食で上場企業であれば平均年収が500万円くらいの企業は多い。
つまり、この2点目の観点からも、くら寿司がベースアップをすることに理由があるように思われる。 ■くら寿司のすごさ これから飲食店に求められるのは、もちろん商品開発やサービスを追い求めることにある。ただ、冒頭でKura Sushi USAの話をしたように、IT企業の側面がある。私自身、某回転寿司チェーンを取材して感じたが、そこらの企業が想像できないほどDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めており、高度なシステムが稼働し続けている。