「プエルトリコはごみの島」トランプ陣営の暴言にヒスパニック系が動いた(1)
キム・ドンソクの米大統領選挙ウォッチ オクトーバー・サプライズは起こるか
米国の大統領選挙が目前だが、決定的な瞬間はまだ残っている。「オクトーバー・サプライズ」が10月の最終日にもたらされたのだ。 激戦州のみを対象にした600回以上の世論調査、数千種類のシミュレーション、科学的データによる計算など、あらゆる分野に巨額を注ぎ込みながら、各陣営は競争を繰り広げてきた。両候補がこのように拮抗しているのは、米合衆国が結局は異なる「二つの国」になりつつあるということを苦々しく気付かせた。このような状況における勝者の決定は、果たして終盤にどのようなことが発生し、何人の有権者がどちらに傾くかにかかっている。接戦の中、大きな事件でなくてもオクトーバー・サプライズは少なからぬ影響を及ぼしうる。 選挙戦終盤、ほぼ10日ほど前からトランプの着実な支持率上昇が見られたが、非常にわずかな増加だった。11月1日の時点で全国的な支持率はほぼ完璧に同率だ。勝敗を分ける激戦州の支持率にすべての視線が注がれている。誤差範囲内だが、2%ほどの差でジョージアとアリゾナはトランプに傾いているとみられる。残りのペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、ノースカロライナ、ネバダの5州は1%ほどで、両候補が伯仲。これは最後の週末の何かが勝敗を決めるということだ。浮動層の多い激戦州の有権者の反応を見て、双方のキャンペーン本部は天国と地獄を行き来している。 「まだ時間は十分ある」がハリス陣営の雰囲気であり、「いかなる事件も発生してはならない」がトランプ陣営の姿勢だ。このような陣営の雰囲気をみると、トランプ陣営は自分たちが勝っていると考えており、ハリス陣営は追撃は可能だと判断しているとみられる。 10月の最終日、19人の選挙人団を抱え、決定的に重要な激戦州となっているペンシルベニア州で選挙運動中のハリス陣営では、「ヒスパニック系有権者の集団的な動きが感知されている」という報告書が回覧された。10月27日、ニューヨーク・マンハッタンでのトランプの集会で応援演説をおこなったコメディアンのトニー・ヒンチクリフが「プエルトリコは海に漂うごみの島」だと述べたことが、米国内のプエルトリコ人を刺激したのだ。米国内のプエルトリコ出身の移民の人口はほぼ600万人。ペンシルベニア州だけでも50万人近くが住んでいる。プエルトリコ人の団結力は強い。米国の多くの大都市で開かれるプエルトリコ人の街頭フェスティバルは活気にあふれ、騒々しいことで有名だ。プエルトリコ系の有権者は政治的に無党派の浮動層であり、選挙の度に共和党と民主党を行き来して投票する。そして、マイノリティーの中でもとりわけ一丸となって1人の候補に「組織票(Group Voter)」を行使することで有名だ。 自分たちに向けらたトランプ陣営の暴言に、連日プエルトリコ系の指導者たちは糾弾声明を発表している。米国メディアは10月末、トップニュースで、これは米国大統領選挙の「オクトーバー・サプライズ」となるには十分だと報道した。ハリス陣営はこれに素早く動いた。トランプ集会で応援演説をおこなったコメディアンによるプエルトリコ蔑視発言を入れた様々な政治広告を作成して放映するとともに、激戦州の有権者に張り付くユーチューバー運動員に広告費を支払って拡散させている。 また、もうひとつの重要な激戦州であるノースカロライナでも、10月27日の週末から新たなシグナルが感知されている。ノースカロライナ州でハリス陣営が1週間にわたり直接有権者を訪ねるキャンペーン(Door to Door:各戸訪問)が効果を発揮し、雰囲気が変化しつつあるとメディアは伝えている。4年前のバイデン陣営は各戸訪問キャンペーンをきちんと行わなかったせいで、ぎりぎりでトランプに敗れた浮動層地域であり、今度は400人あまりの運動員が非常にきめ細かに有権者を訪ねるキャンペーンを展開しており、目に見える効果が現れている。10月30日付のワシントンポストが詳しく報道した。(2に続く) キム・ドンソク|米州韓人有権者連帯(KAGC)代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )