今宮戎「十日戎」“福娘”に授与される着物とは?今年の着物と変遷を辿る
関西圏を中心に毎年1月9~11日に行われるお祭り「十日戎(とおかえびす)」。七福神の一人であり、商売繁盛の神様でもあるえびす様を祀る神社で一年の繁栄を願って行われ、地元では“えべっさん(えびす様)”とも呼ばれているお祭りです。 お祭りを訪れた人は神社で授与される「福笹」と呼ばれる生笹に、福俵や吉兆(きっちょう)といった縁起物の飾りを付けてもらい、飾りの重みでしなる笹を家や店に飾って一年の商売繁盛を祈ります。神社からお裾分けされた「福」が逃げないよう、目的地にまっすぐ帰ることがお約束です。
全国的には、毎年の十日戎で開門から境内まで一番にたどり着いた人を“福男”として選ぶ兵庫県西宮市の西宮神社が有名ですが、関西圏にはほかにも「えびす神社」が数多く存在します。中でも西宮神社、京都ゑびす神社と並んで、日本三大えびすと呼ばれているのが大阪市にある今宮戎神社。創建は西暦600年頃、推古天皇の御代と伝えられる由緒ある神社です。 こちらの十日戎では福男ではなく、色鮮やかな訪問着に白い衣装の千早(ちはや)と烏帽子(えぼし)を付けた“福娘”が境内の社務所にずらりと並び、参拝者とえびす様との仲人として、福笹に飾りを付けます。
福娘は毎年約3000人ほどの応募者の中から、審査を経て40名の女性を選出。前年12月に福娘が決定するとローカルニュースで流れるほどで、大阪では年末年始の風物詩ともいえる行事です。 福娘に選ばれると神社からお揃いの訪問着(中振袖)が授与され、十日戎の3日間は全員がその着物を着て神社へのご奉仕(笹への飾りつけや行事への参加)を行います。 実は筆者も今宮戎神社の福娘OGの一人。十数年前、緊張して一睡もできなかった十日戎の当日、縁起物が描かれた同期とお揃いの着物に袖を通すことがとてもうれしかったことを覚えています。着物が好きになったきっかけもこの時。慌ただしくすぎる3日間をその訪問着と共に乗り切ったこともいい思い出です。 そんな福娘にとって大切な着物。毎年色が異なり、時代によっては柄も全く異なります。これまで語られることの少なかった歴代の福娘の着物について、今宮戎神社にお話しを伺いました。