〈立食そば屋大量閉店〉“日本一の立食そば屋”が憂慮する実情「不誠実だと思っている」「値上げに納得してほしくない…申し訳なくて」維持するには “家族経営でしか無理”と苦悩を告白
家族経営しかない… 立ち食いそばの生き残る道
ビニール袋が不足して、「モノがあるけど包むものがない」という状況に陥り、紅ショウガなどを仕入れるのにも苦労が絶えない。名物のゲソ天も仕入れのルートをいろいろ探して、なんとか確保できている状態なのだという。 ほかにも最低賃金の値上げなど、「安さ」を売りにする商売ではとにかく向かい風が吹きっぱなしの情勢となっている。これからの立ち食いそば屋の未来はどうなってしまうのだろうか。 「究極言えば、昔ながらの値段で安さを売りにやっていくとしたら家族経営しかないのだと思います。基本的には外部のスタッフを雇わないで、自分たちが我慢して値上げ分を吸収して、身を削ってやっていくっていうスタイルです。 しかしそれでは後継者がいないので長続きしませんよね。継続的な事業にするには、ある程度の売り上げ、利益を出さなければならない。そうすると、今の時代、立ち食いそばの適正価格はいくらなのかなって考えるわけです。 ラーメン屋さんでは1000円出してくれる人がいますが、立ち食いそばでは……。以前、ウチでは300円あれば一通りのメニューが食べられましたが、今では500円出しても看板メニューを食べられない状況になってきている。いくらだったら、『安い・早い・うまい』なのかなと考えるわけです」 一由そばはもともと店の常連客でファンだった山本社長が経営を引き継ぎ、従業員を多数抱えながら店を回している。物価が上がったから従業員の給料を減らす……というわけには当然いかない。 特に一由そばでは、入ってきたアルバイトが1日や2日で簡単に辞めてしまい、またバイトを募集して新人を教育し直すという負担も大きかったため、最近では社員を中心にして、安定的な経営を目指している。 また、山本社長は後継者問題に直面していたほかの立ち食いそば屋の運営もしているが、「そういう店が自分自身も好きなんですよ。だから残ってほしい。自分ができるのであれば、残ってほしいという思いでやってます」と明かす。