なぜ”浪速のロッキー”赤井英和氏の長男・英五郎はプロ2戦目でTKO勝利を飾れたのか…負けて学んだ教訓と父の現役映像の刺激
“浪速のロッキー”と呼ばれた元プロボクサーで俳優の赤井英和(62)の長男、英五郎(27、帝拳)が2日、後楽園ホールで行われた東日本ミドル級新人王予選で、この試合がデビュー戦となるマッチョパパ一基(33、協栄新宿)と対戦、2回50秒に右アッパーの一撃でTKO勝利した。昨年9月のデビュー戦では1回にTKO負けを喫していた赤井が、2戦目でプロ初白星。技術的には攻守にわたって粗さが目立ったが、観戦した父は「今まで一番強い」と“ジュニア”のパンチ力を絶賛した。9月27日に行われ準決勝ではキックボクシングの元RISE王者でK-1などで活躍してボクシングに転向した左右田泰臣(34、EBISU K's BOX)と対戦する。
右アッパー一発で沈め相手は担架で退場
父譲りの“ロッキーDNA“と言っていい。 2ラウンド。1475人のファンで埋まった“聖地”後楽園ホールが揺れる。インサイドからの鮮烈の右アッパー。 現役時代に、そのパンチ力でデビューから12連続KO勝利という当時の日本記録を更新した父が「今まで45、46年ボクシングにかかわってきたが、英五郎のパンチが一番強い」と絶賛したパンチ力が炸裂し、そのリングネーム通りに全身筋肉のムキムキのボクシングを始めてまだ2年の新人は、そのまま大の字。あまりもダメージが激しく起き上がることができず担架で控え室に運ばれた。 プロ2戦目にしての初勝利。赤井は、両手をパンと合わせたが、それ以上派手に喜ぶわけではなく、四方のファンに向けて深々と頭を下げた。 「良かったです。運よく勝てた。下手をしたら(僕が)倒れていたかも」 ハラハラドキドキの薄氷を踏む勝利だった。 「練習でやってきたことがリング上ではゼロになってしまい何もできなかった」の言葉通り、1ラウンドは、デビュー戦同様にガチガチに力んでいるところに、左フックをもろに浴びてぐらついた。頭を下げてブンブンふりまわしてくるマッチョパパに右のオーバーフックなどをヒットされ、鼻血を吹き出して危ない場面を作った。だが、昨年9月のデビュー戦で負けを知った赤井は、その試合にひとつの教訓を得ていた。 「去年は、パンチをもらっちゃいけないと試合に臨んでもらってしまった。今回は、もらう覚悟を持ってリングに上がった。だから耐えられた」 被弾も覚悟で赤井も負けじとフックを振りまわした。 2ラウンドに入ると赤井はボクシングスタイルを一変させた。一変させたというより、練習を重ねた原点に戻ったと言っていい。距離をとり、コンパクトな左ジャブからスタート。ジャブでリズムをつかみ、冷静にマッチョパパのパンチを見極めて、そのパンチの打ち終わりに「練習していなかったパンチ」の右アッパーを打ち抜いたのである。この本能こそ、父譲りのDNAなのだろう。 リングサイドで佳子夫人と娘と共に観戦していた父は、立ち上がって抱き合い涙を流していた。 「英五郎のパンチが強い理由は足が強いから。今日は、その足で打つパンチがあった」。確かに足がよく動いていた。