300kgの巨体でも時速50km! で疾走、驚かせたときや子連れの母親は人も襲うヒグマの亜種
生存への脅威
ハイイログマの数は最大時、5万頭を超えていた。しかし西部の開拓が進み、ハイイログマの生息地に町や都市が建設されるにつれ、その数は激減した。20世紀初頭に盛んに行われたハイイログマ狩りも大きな脅威となった。1920年代、1930年代になると、個体数は最大時の2パーセント未満まで減少、1960年代には野生に暮らすハイイログマの数は僅か600~800頭だったと推計されている。そして1975年、米国絶滅危惧種法(ESA)の絶滅危惧種に指定された。
保護
今日、ハイイログマは保護活動の成功例と見なされている。ESAの保護下に置かれて以来、数は回復している。米魚類野生動物局(FWS)は保護区を設け、ハイイログマに関する啓発活動を行った。また、家畜が殺された場合に牧場主に補償する制度を作るなどして、人間とクマの関係の改善に努めていった。 現在ハイイログマの数は1975年の5倍以上にまで回復し、米国本土には1400~1700頭が生息している。とはいえ絶滅の危機を脱したわけではない。FWSは2度にわたり、ハイイログマを絶滅危惧種の指定から解除しようと試みたが、いずれも実現しなかった。 2度目の試みは2017年、連邦裁判所に止められた。ハイイログマのさまざまな群れが遠く離れて暮らしているため、遺伝的多様性に欠けるのではないかという懸念があったためだ。保護活動家は指定解除することで狩りが盛んになり、ハイイログマが再度、数を減らしてしまうことを心配している。
ナショナル ジオグラフィック 日本版編集部