シャネル・ネクサス・ホール、次世代のアート支援に注力するヤナ・ピールが銀座から語る未来
──今後はより若手や女性のアーティストにフォーカスしていくということでしょうか? ピール:女性の存在やその地位向上はシャネルの創業以来、切っても切り離せない重要なテーマです。創業者が女性であることはもちろん、現在世界中で働くシャネルの従業員の75%は女性ですし、パートナーシップを組んでいるロンドンの〈ナショナル・ポートレート・ギャラリー〉では2023年に女性アーティストの作品展示を行うプロジェクトを成功させました。ただ、女性だけに特化するというよりは、さまざまな背景を持ったすべての人たちの新しい声を取り上げていくつもりです。 ──日本に〈シャネル・ネクサス・ホール〉があることの意義をどう捉えていますか? ピール:まず私が現在のポストに就いて5年が経とうとしていますが、その間、アジアのアーティストたちにより多くの関心が集まっているように思います。日本にはすでに世界的に名の知れたアーティストや建築家が多く、草間彌生、安藤忠雄、村上隆、SANAAなど枚挙にいとまがありません。日本のアーティストに興味を寄せる人は世界中にいますが、彼ら同士が互いにつながったり、日本の新しいアートシーンを知りたいときにアクセスできるようなプラットフォームが、残念ながら現状では充分ではないように思います。日本のアートを受容したいと考えている人たちがより気軽にアクセスできるような仕組みの一端を、今後われわれが担っていければと願っています。 ──そのほか、シャネルが取り組んでいるアート支援について教えてください。 ピール:2021年にCHANEL Culutre Fund(シャネル文化基金)を設立しました。その一環として創設した「CHANEL Next Prize」では2年に一度、10名の新進気鋭のクリエイターを選び、賞金10万ユーロを授与してその活動をサポートしています。今年の受賞者の顔ぶれは4大陸6カ国にまたがり、ゲームデザイナー、オペラ歌手、ダンサーなど実に多様なジャンルの方々です。その審査員も偏りがないよう、俳優のティルダ・スウィントンやアーティストのツァオ・フェイ(曹斐)、ハンス・ウルリッヒ・オブリスト、キュレーターのレガシー・ラッセルなど多彩な分野の方にお願いしています。また「CHANEL Connects」というアート&カルチャーのポッドキャストも開設し、さまざまな分野のアーティストの言葉や対話を発信しています。 ──今後の展望を聞かせてください。 ピール:〈シャネル・ネクサス・ホール〉は単に展覧会スペースというだけでなく、さまざまな国・ジェンダー・世代・文化圏のアーティストやアート受容者を結びつけ、対話が生まれるベースとして機能していきます。コロナ後に多くの人が真っ先に旅したい場所として挙げたエキサイティングな都市である東京で、次の世代、次に起こることへの支援を強化し、発信していきます。 【開催中の展覧会】 Borrowed Landscapes フェイイ・ウェン|パン・カー 二人展 会期:2024年5月22日(水)~7月15日(月・祝) 会場:シャネル・ネクサス・ホール 住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4階 開館時間:11:00~19:00(最終入場18:30) 問い合わせ:シャネル・ネクサス・ホール事務局 TEL.03-6386-3071 BY MARI MATSUBARA