トランプ氏「ウクライナを見放すのか支援継続か」、次期政権で対立する2グループが浮上
「バイデン以外なら誰でも良い」(anyone but Biden)。これが、この外交工作を始めたゼレンスキー政権の合言葉だった。ゼレンスキー政権としては、ロシアとのエスカレーションを恐れて、ウクライナからの武器供与の要請に対し、つねに及び腰で小出しにしてきたバイデン政権には失望していた。 このため、アメリカの次期大統領としては、決断力があるトランプ氏のほうがウクライナをより強力に支援してくれる可能性があると期待したのだ。トランプ陣営や共和党を相手に、プーチン・ロシアに対する「力による平和」の必要性と説き始めた。
もともと共和党には、リンゼー・グラム上院議員やマイク・ターナー下院議員など民主党以上にウクライナ支援に熱心な議員も少なくない。 ゼレンスキー政権としては、こうした工作が実を結んで、トランプ氏がこれまでの「取引」路線から転換し「力による平和」路線に理解を示すことを期待している。 ■トランプの本気度を見極めるプーチン 一方、プーチン氏は、トランプ次期政権がウクライナ紛争の解決をめぐってどのような提案を出してくるのか、その出方を見守る姿勢だ。その提案内容でアメリカとロシアの関係改善への本気度を見極めたいと考えているはずだ。
ただ、現在の前線に沿って戦争を凍結するような提案が出てくれば、クレムリンがただちに受け入れるかどうかは微妙だ。プーチン氏とすれば、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への非加盟が明確にならなければ、国内的にも「勝利」として誇示することは難しいからだ。 先述したように、トランプ氏がロシアにとって、不利な妥協案を出してくるのではないか、との警戒感も念頭にあるだろう。
吉田 成之 :新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長