玄理がドラマ撮影中のカルガリーで出会った「生まれて良かった」瞬間とは
サイクリングで「神様ありがとう」
ダウンタウンからちょっと歩くとため息が出るような自然や公園があって、山も川も湖もいちいちスケールがでかいのだ。今まで20か国くらいを一人旅したり仕事で訪れたりしたけど、カナダの自然の大きさは迫力が違う。うわあー、と声が出て笑ってしまうくらい。 数日後、カルガリーから車で数時間のもっと小さい街に移動した。1日休みの日があって、みんなで自転車を借りて湖までサイクリングをした。 ちゃんと自転車に乗るのは子供の頃以来だし、普段都会で怠けている私からするととんでもない山道で、このまま遭難するんじゃないかと思いながらペダルを漕いだけど、帰りの下山道――ばああっと目の前に開けた絶景を見た時、心の中で私は「神様ありがとう」と呟いた。この場所、この瞬間にこの人たちといられて、この景色を見せてくれて、もはや地球に生まれてありがとうって思った。 こんな美しい自然を与えてくれてありがとう、だったかもしれない。それくらい、太陽が降り注ぐ壮大な山は、信じられないほど神々しかった。顔に当たり続ける風が気持ちよかった。汗でひんやりした首筋の、産毛を一本一本感じる。写真を撮るたび、光が踊っていた。 生まれて良かったと人間が思うのは、これはもちろん人によるけれど、でも私は、表彰されたりものすごい贅沢をしたり、富と名声にウハウハする時じゃなくて、意外とこういうことなんだ、と思った。ただ私がいまここにいる、ちゃんといる瞬間。こんな時間、あと何回人生で訪れるだろう。生きていて良かった、じゃなくて生まれて良かったって思った経験、私はきっと初めてだったから。 まだまだ見せたい素敵な写真がいっぱいあるけれど、ドラマのオンエアまで大切に取っておきます(気が遠くなるくらい先ですが)。 そうこうしているうちに、日本では12月8日から始まるwowowの新ドラマ「誰かがこの町で」や、来年2月から始まる舞台「浪人街」の出演が発表されたので、その話はまた来月。いよいよ年末ですね。皆様、寒さとお体に気をつけてお過ごしください。 (俳優 玄理)