なぜ大迫勇也はブレーメンでゴールを量産できているのか?
ドイツにわたって6年目でようやく生まれ、時間の経過とともに自分のなかで力強く脈打っている理想的なサイクルに、大迫は「プレーしていてすごく楽しい」と声を弾ませた。言葉通りに、アウグスブルク戦では多彩なフィニッシュのパターンを披露している。 先制点はセンターサークル付近から発動されたカウンターでスピードを生かして抜け出し、縦パスを冷静沈着にゴール右へ蹴り込んだ。決勝点は左サイドから放たれた山なりのクロスにファーサイドへ流れながら反応し、右足による完璧かつ豪快なボレーでゴールネットを揺らした。 鹿児島城西高時代からフォワードに求められる武器を、すべてハイレベルで搭載してきた。得点感覚や高い決定力を導く多彩な技術、そして相手ディフェンダーとの駆け引きはもちろんのこと、味方を生かすポストプレーにも長け、コンタクトプレーでも強さを発揮する。 まさに万能ゆえに、鹿島アントラーズからTSV1860ミュンヘンをへて、2014年6月に加入した1.FCケルンでも中盤での起用が多かった。2015-16シーズンはわずか1ゴールに終わり、ブラジルワールドカップを含めて、コンスタントに招集されてきた日本代表における軌跡も途切れた。 約1年5か月にもおよんだブランクを乗り越えて、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督に率いられていた日本代表への復帰を果たしたのが2016年11月。アントラーズ時代に慣れ親しんだ県立カシマサッカースタジアムで行われた、オマーン代表とのキリンチャレンジカップだった。 復帰戦でいきなり2ゴールをマーク。自らの力でロシアワールドカップへの視界を良好にした大迫は、アジア最終予選を戦っていた過程でこんな言葉を残している。 「ゴール前でもっと迫力を出すことが、自分の課題だとずっと思っている。ゴール前に入っていく回数だけでなく、ゴール前でボールを受ける回数ももっと増やさないといけない。普通にプレーしていたら出せないものなので、だからこそもっともっと意識しないと」 頭では理解していても、所属クラブと代表チームとで求められる役割がどうしても乖離していた。ギャップを感じながら、しかし、ロシアワールドカップのコロンビア代表戦では決勝ゴールを決めて西野ジャパンを波に乗せ、昨年9月に発足した森保ジャパンでは最多となる6ゴールをあげている。 ボールも巧みに収められるから、森保ジャパンで結成された2列目トリオ、中島翔哉(FCポルト)、南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(PSVアイントホーフェン)との相性も抜群だった。そしていま、代表チームに続いて所属クラブでもセンターフォワードを任された大迫は、ブレーメンで手にした最高の流れを、これから苦楽をともにしていく母国の仲間たちへ還元しようとしている。