6年ぶり世界再挑戦失敗の黒田雅之が流した「血の涙」
試合後、「黒田の闘争心は素晴らしかった。パンチも重たかった。でも、どちらのパンチが重たかったかは、試合後の2人の顔を見ればわかるだろう」と、南アフリカから来た王者は言った。 12ラウンドを戦ったとは思えないほど綺麗な顔をしていた。 ひとつだけ聞きたかった。 黒田が、そこから大きなダムを決壊させるためのヒビを作ろうと懸命に打ち続けたボディのダメージについてである。 ムザラネは涼しい顔をして言った。 「すべてエルボーブロックで外した。本当に効いたのは一発だけだったぜ」 おそらく一発だけということはないだろう。 だが、小さな体をブロックで抱え込むようにして固めて隠し、腹部は肘で守り、左右に動きながら、決して急所に打たれないような細かな工夫をしていたのは事実である。36歳の老獪なテクニックもまた世界王者にふさわしい、それであった。 最後に。新田ジムに高校生で入門して17年目となる黒田は、自らの進退について「今は何も考えられない」と明言を避け、新田会長は「本人がやりたければ道はあるが、パンチも打たれ、体のこともあり、単純にやりたいなら(やれ)とは言えない。慎重になる」という姿勢を明らかにしている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)