県庁所在地に立地、避難計画の実効性課題 宙に浮く使用済み燃料 島根原発2号機再稼働
中国電力島根原発2号機(松江市)が7日、再稼働した。県庁所在地に立地する唯一の原発だが、島根、鳥取両県にまたがる30キロ圏には約45万人が暮らし、自治体が定めた避難計画の実効性を懸念する声は根強い。原発の運転再開は脱炭素と電力安定供給に寄与する一方、今後増え続ける使用済み燃料の行き場は宙に浮き、課題は多い。 原発から概ね30キロ圏の自治体は、東京電力福島第1原発事故を教訓に国が策定した「原子力災害対策指針」などに基づき、原発事故時の避難ルートや屋内退避の計画を定めることが法律で義務付けられている。 具体的には、原発から半径5キロ以内の住民は30キロ圏外への避難、5~30キロ以内の住民は自宅や避難所で屋内退避するよう求めている。島根原発の場合、2県6市の自治体が関係し、内閣府によると一時避難先には岡山、広島両県も含まれる。 原発から島根県庁までの距離は約9キロ。事故による避難指示が出た場合、県庁機能を30キロ圏外の他市へ移転する計画も盛り込まれる。ただ、1月の能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県)周辺の避難ルートが寸断。関係自治体からは避難計画の実効性を疑問視する声が上がり、島根県の丸山達也知事も「事故リスクはゼロではない」として、能登半島地震を踏まえた安全対策を急ぐ考えを示した。 原発が再稼働すれば、使用済み燃料の管理も問題となる。中国電によると、今年3月時点の島根原発の貯蔵率は約57%。貯蔵プールが満杯になれば、運転はできなくなる。管理計画の前提となる核燃料サイクルは、青森県六ケ所村の再処理工場の稼働が見通せず、使用済み燃料の行き場は宙に浮く。このため、中国電は関西電力と共同で山口県上関町に使用済み燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」の建設を検討している。 約12年10カ月ぶりの再稼働となる島根2号機では、原発運転員の約6割が「未経験」という懸念も抱える。中国電力の中川賢剛社長は7日発表したコメントの中で「今後も設備の検査・点検などを着実に進め、再稼働工程の万全を期す」と強調した。(白岩賢太)