Netflix『三体』科学監修に聞いてみた。あれは現実的にありえるの?
サイエンス好きなら聞かずにいられない! 劉慈欣のベストセラーSF小説を、『ゲーム・オブ・スローンズ』制作デュオが実写化したNetflixドラマシリーズ『三体』。シーズン1・全8話が配信中ですけど、もうごらんになりましたか? 【全画像をみる】Netflix『三体』科学監修に聞いてみた。あれは現実的にありえるの? SFファンタジーでありながら、量子力学や天文学、理論物理学の雑学満載。プロから見て、どこまで科学的信ぴょう性があるのかが気になっちゃいますよね。 そこで米Gizmodoでは、科学監修を務めたケンブリッジ大学物理学准教授のMatt Kenzieさんに直接話を聞いてみることにしました。 准教授が監修にあたって心がけたのは、木星で跳ね返る通信シグナルの計算結果をダブルチェックするレベルの人にも、科学に疎い人にも満足してもらえる作品づくり。「科学的整合性をとる詰めの話し合いをもって、科学的にあり得ないシーンや、物理の法則に照らして実現不能なシーンが出ないようチェックに努めた」といいます。 「ですので、科学的な部分の多くは、一応自分なりにこれはこう、あれはこうと、実現の道筋を考えて、説明はつけられるようにしています」
そもそも「三体問題」って何?
タイトルの「三体問題(The Three Body Problem)」は物理の世界に実存する命題で、互いに引力を及ぼし合う3つの物体(三質点系)がどのような運動を辿るかを問うもの。2つの物体の運動法則を問う二体問題は、万有引力の法則を見出したニュートンによって解かれましたが、三体問題はまだ解明されていません。 3つの物体は互いに大きな引力で引き合うため、系は最終的には崩壊してしまいます。天体の文脈に置き換えると、3つの天体の軌道はカオスになったりするので、各々の未来の位置や運行を正確に予測することは、ほぼ不可能なのですね。 NASAによると、あらゆる天体系のおよそ10%は3つの天体の系と推測されるのだといいます。同等の質量の2つの物体(惑星など)であれば、互いに引かれ合って回りますし、重心の軸が共通なので軌道を求めるのは簡単です。しかし、そこに第3の物体が入ると話は別。途端に無軌道になって、互いに予想不能な形で作用し合ってしまいます。 そんな不幸な三角関係に囚われた惑星は、1つの惑星の周りを回り続けることもできなくて、極端な場合、惑星と惑星の間を行ったり来たりするばかりです。 惑星2つが近くにあって、第3の惑星だけ遠くにある場合も同様に、相互作用は不安定です。3つともバラバラに離れている系ほどカオスではないにしても、互いの引力はとても強力。これは惑星同士の距離が絶えず変わり続けることに起因します。