天橋立望むカフェで「若者に丹後ちりめんを」織物会社社長が織りなす人の輪
ガチャン、ガチャン…、機音が響く織物工場の2階に7月、カフェをオープンした。工場を営む京都府与謝野町岩滝の織物会社「丹菱(たんりょう)」の社長を務める糸井宏輔さん(51)。「Amanohasidate Terrace Coffee(アマノハシダテ・テラス・コーヒー)」の名前の通り、カフェからは阿蘇海の向こうに天橋立を望める。「丹後ちりめんを知ってもらい、町の観光にもつなげたい」との思いを抱く。 ショップを兼ねる店内には丹後ちりめんを使ったキャップや洋服、エプロンが販売されている。従来は化学繊維を使った洋服の生地を織ってアパレル業界に卸してきたが、2019年11月からオリジナルのブランド「TRIP 1 TANGO(トリップ・ワン・タンゴ)」を手がける。 きっかけは妻への誕生日プレゼント。「シボ」と呼ばれる凹凸が特徴の丹後ちりめんのジャケットを贈ると喜ばれた。昭和40年代から年配の婦人洋服向けのちりめんは人気があったといい、「若い世代にも身近にカジュアルにちりめんを着てほしい。高級感があってしわになりにくく、1着で旅先にいける」と説明する。 丹菱は、蒸気船を運航していた明治時代から続く屋号「丸丹」と、指定工場となった化繊メーカー「三菱アセテート」(現・三菱ケミカル)から名付けられ、1960年にできた。早くから着物から洋装へとシフトした家業を継ぐ使命感を持ちながら育った。「都会を早く経験したい」と高校から京都市内に出た後、25歳で帰郷。3人の子育ての経験から、カフェにはキッズスペースを設けて親子連れが集う場を目指す。「来年には1日1組限定のビアガーデンを開いたり、若者が交流するイベントを催したりして、地域を盛り上げたい」と人の輪も織りなす。