もっともショートでディープな「鎌倉アルプス」雪ノ下~大町の人込みを避ける復活の祇園山コースを歩く
俗に言う鎌倉アルプスで、最短のコースとなる祇園山ルート。鎌倉市の広報パンフでは祇園山ハイキングコースと記されています。同コースは令和元年に関東地方を襲った台風の影響で長らく通行が禁止されていました。昨年春にようやく復活し、鎌倉アルプス巡りファンの喜ぶ声が聞こえてきました。復活のショートコースは、しっかりディープでした。 【写真】緑豊かな祇園山ハイキングコースを見る(全15枚)
人で溢れる段葛の外側となる住宅街から静かな登山道へ
平日でも人で溢れる鎌倉八幡宮通り。段葛を中央に西側には牛歩のごとき流れの小町通り。東側には雪ノ下~大町を結ぶ小町大路が走っています。クルマでの抜け道として最近では渋滞も目につきますが、観光地でなく鎌倉の市井の方々の生活の中に点在する古刹・名刹巡りも楽しめる路地でもあります。祇園山ルートは、今回はその住宅街の片隅から入山し、大町側の八雲神社へ降りる南行きを辿ります。 八幡宮を左に鎌倉往還を鎌倉宮方面に進むT字路交差点に建つ宝戒寺をランドマークに、小町大路に踏み入ります。5mほど歩いた先の細い路地を左に分け入ります。路地入り口に紅葉山やぐらと北条高時腹切りやぐら、東勝寺跡の案内表示を見ることができます。 一度路地を右折して突き当たり、再び東勝寺跡の表示に従って左に折れ、あとは一直線です。静かな住宅街を横切る滑川を渡ります。この滑川に架かる橋が東勝寺橋で、大正13年(1924年)に建造されたアーチ橋です。美しく優しいアーチ曲線が特徴の平成11年(1999年)に「かまくら景観百選」に選定された重要建築物です。
シダ生い茂る登山道を進み、由比ヶ浜の見下ろす絶景展望台へ
祇園山ハイキングコースのコース図ボードが右手。左手には東勝寺跡のフェンスが続きます。鎌倉幕府滅亡の地でもあり、重要な遺構が残されているそうです。管理区域のため立ち入ることはできません。 登山口すぐ左手に腹切りやぐらの供養塔が立っています。北条得宗家最後の執権・高時一門が、新田義貞率いる幕府討伐軍に追い詰められ自害した場所と伝えられ、冒頭にランドマークとして表記した宝戒寺が供養管理をされているそうです。 大きく口を開けた横穴のやぐらがあるのですが、現在は立ち入り禁止のロープが張られています。未だ、この腹切りやぐらへの脇道は、台風の影響による斜面崩壊で危険な状態とのこと。登山道から鬱蒼とした林の木立の急登を駆け上がります。 それまでの瀟洒な住宅街からはうかがえないシダの生い茂る登山道は、まさに山道です。登り出しこそ一応階段も修復されていますが、ほどなくして木の根が這うディープな鎌倉アルプスの王道ルートに転じます。小さなアップダウンと時折大きな段差を繰り返し、アスレチック度を感じさせるルートだと思います。 八雲神社・見晴台の表示に従い先を進み、八雲神社方面と見晴台への分岐点からは左手先の見晴台を目指します。木の根の這う踏み跡を辿った先にいきなり見晴台は現れます。それまで、これといった眺望のないコースだけに、鎌倉の海を見渡せる喜びを感じる瞬間ですね。 材木座~由比ヶ浜~稲村ケ崎方面に眺望は広がり、鎌倉の絶景を堪能できます。さほど広くはない展望台には方位盤も設置されています。晴れ渡った日なら富士山も望むことができるようです。 来た道を分岐まで戻り、八雲神社の表示に従って登山道を下ります。神社らしき屋根が見えてからは急登の下りになります。足もとに注意しながら下山しましょう。八雲神社の赤いノボリが立ち並ぶ脇を抜けて、大町を経由して鎌倉駅に向かい、帰路につきます。 コース自体は1時間程度ですが、鎌倉の史跡と意外に歩き甲斐のあるコンパクトコースは魅力です。
ソトラバ編集部