「加害者のお金でランドセル買いたくない」 国の賠償金立て替え求めて被害者らがシンポ
事件などで傷を負った人や家族を失った犯罪被害者らでつくる新全国犯罪被害者の会(新あすの会)は7月21日、シンポジウムを開き、加害者の賠償債権を国が買い取って立て替える制度や犯罪被害者庁の設立を求めた。省庁間にまたがる施策を一元的に管轄する行政組織が不可欠だと訴えている。 【画像】法改正に携わった小泉進次郎氏 夫を隣人に殺された女性が報告し、幼い娘を抱えて役所など各所への届け出を自分で調べて提出しなけらばならず、大きな負担だったと吐露。また加害者に娘の名前を明かしたくなかったため、賠償請求の原告は自分一人となり、額は半分になったと説明し、未成年者が遺族の場合は新たな制度が必要だと主張した。 「賠償請求は、被害者が相手に責任を求めることができる唯一の手段。お金ではなく、許していないということを伝えたかった。加害者本人からお金を受け取ることは苦痛です。そのお金で娘のランドセルを買いたくはないんです」と訴え、生活基盤のための補償は国によるべきで立て替え制度を求めた。 ●岡村弁護士「今こそ被害者の困らぬ道を」 旧あすの会は、自身も事件で妻を失った岡村勲弁護士を中心に2000年から活動し、犯罪被害者の裁判参加や被害者等基本法策定などに結びつけた。2018年に解散したものの、被害補償制度の充実を求めて、新あすの会を2022年3月に立ち上げた。 この日は旧あすの会時代から活動してきた神戸連続児童殺傷事件の遺族・土師守さんや光市母子殺害事件の遺族・本村洋さんらも駆けつけた。 岡村氏は「被害者になりたくてなったわけではありません。いま自分は安全でも、あすは被害者になるかもしれない。あすの自分たちのためにも、今こそ被害者庁をつくって、もう被害者が困ることのない制度をつくってほしい」と述べた。 ●給付金の最低額は6月から増額に 新あすの会は2022年の設立時に、7つの決議を採択。▽立て替え制度▽被害者の生活に必要なものの現物支給▽被害者カードの発行・提示による一括支援▽被害者庁の設立ーーなどを求めていた。 これを受けて、自民党PTなどが議論。2024年6月から「犯罪被害者等給付金」の最低額がこれまでの320万円から1060万円に増額されるなどの改正がされた。議論の中心となった小泉進次郎衆院議員、弁護士の宮崎政久厚労副大臣、三谷英弘衆院議員も出席し、当事者の声を形にすることの重要さを語った。 庁設立について小泉氏は「大変なこと」とした上で「目標に向けて何も動かないのが一番よくない」と説明。柔軟に実現できる担当大臣の設置を提案し、施策に対して注力しているというメッセージを示すことができるのでは、と話した。
弁護士ドットコムニュース編集部