浮かんでは消えてきた「サマータイム」構想 坂東太郎のよく分かる時事用語
森喜朗元首相のお陰? で来年から少なくとも6月から8月いっぱいぐらいまで午前4時過ぎに起床させられる可能性が出てきました。「サマータイム」導入案です。 【画像】もはやどちらが標準時間?米国は年間3分の2続く「サマータイム」なぜ誕生? 森元首相は2020年東京五輪・パラリンピックの組織委員会会長。複数の報道によると、東京五輪の「暑さ対策」として、とりあえず2年(2019年と2020年)の期間限定で時計の針を2時間進める案を安倍晋三首相に要請したようです。五輪期間は7月24日から8月9日。「たった2週間強の運動会のために何で全国民が早起きを強いられるのか」と早々に反発が出ています。 サマータイムはこれまでにも、省エネや生産性向上の観点から導入が図られようとしました。「暑さ対策」とは全く異なる文脈です。果たして妥当性があるのかを考えてみます。
なぜ導入論が浮上?
そもそも「五輪の暑さ対策」になるのでしょうか。「例えば」と推進側や一部メディアが好んで用いるのが、男女マラソンです。午前7時スタートを2時間早めれば午前5時。1日の最低気温の目安となる「日の出時刻(午前4時40分頃)から1時間程度」にちょうど収まりますし、約3時間後のゴール時間の気温も現行より相当下がります。 「だったら単に午前5時スタートにすればいい」という考えもあるでしょう。ただそれだと運営に携わる者や観客が電車などの始発で会場に間に合いません。標準時(日本時間)自体を動かせば問題は解消します。 しかし言うまでもなく、マラソン(2日)だけが五輪競技ではありません。繰り上げによって今より暑くなる競技も当然出てきます。何をどうしても「1日24時間」も「暑さ」も変わりはないのですから。東京五輪の暑さ対策は既に屋外競技を「早める」「遅らせる」の措置を講じており、「遅らせる」側の意味がなくなる可能性も。 近年の東京の傾向だと、「激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける」べきとする「暑さ指数」の「厳重警戒」レベル以上が、しばしば午前10時から午後3時ぐらいまで続いています。サマータイムを導入しても、その時間帯が午前8時から午後1時にずれるだけ。「この時間帯の屋外競技は休む」方が、よほど暑さ対策になるのではないでしょうか。 だいたい「災害レベル」(気象庁)の暑さだけが不安なわけではありません。ゲリラ豪雨や台風など文字通りの「災害」が、大会時期の日本を当たり前のように襲うのは皆様ご存じの通りです。それを「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」などと大見得を切ったのは誰か。他ならぬ東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会が2013年1月に国際オリンピック委員会(IOC)へ提出した立候補ファイルの文言です。