【全盛期、再び!】世界を熱狂させたル・マン24時間レース「第三章 ディーゼル、ハイブリッドの時代へ。現在のWECが誕生へ(2000年代)」 | ル・マン24時間レース2024 開幕直前特集!
ただ、残念ながら「プジョー」はWEC開始前にル・マンからの撤退を表明。レーシングハイブリッドの開発はリーマンショック後のメーカーにはコスト的にも厳しい状況で、F1も本格的なハイブリッドシステムの導入を目指していましたから、興味を示すメーカーは現れず、しばらくはアウディvsトヨタの闘いとなりました。
それでもトヨタの参戦は日本とル・マンを結びつける上で大きなトピックスでした。FIA WECの1戦が富士スピードウェイで開催。ル・マンにとっても強すぎるアウディの対抗馬がいることは大事な要素でした。そして2014年からは耐久王「ポルシェ」が参戦。アウディはディーゼルハイブリッド、トヨタは前後四輪にモーターからの動力を伝える四駆ハイブリッド、ポルシェは運動エネルギー回生と熱エネルギー回生を組み合わせる複雑なハイブリッドを採用と、3社が全く違うハイブリッドシステムのアプローチで挑んだ新技術の開発競争となったのです。
ル・マンの予選ポールポジションタイムが僅か4年で7秒も縮まったことを考えると、いかに3社の競争が激しいものだったがわかると思います。しかし、天井知らずの競争は崩壊への道のりであることはル・マンの伝統。アウディは歴代2位となる13勝をマークして撤退します。
その年のトヨタは優勝目前のファイナルラップでストップ。それはル・マン24時間レース史上に残る悲劇のストーリーでした。翌2017年、トヨタは3台エントリーの必勝体制で挑み、コースレコードを更新するタイムでポールポジションを獲得しますが、トラブルやアクシデントなどが相次ぎポルシェに敗北。ポルシェは勝ち逃げする形で撤退し、翌年以降のWEC、ル・マンで総合優勝を狙うビッグメーカーはトヨタだけになってしまいました。
悲劇の翌年、必勝体制で挑むも歴史的惨敗を喫したトヨタの姿を現地で見ていた人がいました。モリゾウこと豊田章男社長(現会長)です。モリゾウさんがル・マンを訪れるのは初めてのことでした。その年、J SPORTSはル・マン24時間の完全生中継を実施。現地からの実況を務めた筆者はゲストとしてモリゾウさんとトークさせていただきましたが、ル・マンを新鮮な気持ちで見ていらっしゃったことを今でも覚えています。