年金の「繰下げ受給」をしていた夫が68歳で亡くなりました。繰下げていた分、「遺族年金」は多くなるのでしょうか?
年金を65歳から受給せず、66歳以降に受給開始を繰り下げると、受け取る老齢年金が増額されます。では繰下げ待機中の人が死亡した場合、残された家族に支給される遺族年金にも増額分が反映されるのでしょうか? 本記事では、繰下げ待機中の人が死亡した場合の遺族年金と、遺族が受け取る未支給年金について説明します。 ▼年金「月15万円」を受け取っていた夫が死亡。妻は「遺族年金」をいくら受け取れる?
年金の繰下げ受給
老齢基礎年金と老齢厚生年金は、通常は65歳から受給できます。しかし本人の意思で、受給開始年齢を66歳以降75歳まで繰り下げることも可能です。繰下げをすると、年金額にはどれくらい影響があるのでしょうか? ■繰下げで増える年金額 老齢年金は、1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増えます。例えば、年金額10万円の人が12ヶ月(1年)繰り下げると、8.4%増えて10万8400円になり、60ヶ月(5年)繰下げると42.0%増えて、14万2000円になります。さらに75歳まで120ヶ月(10年)繰下げると、最大となる84.0%の増額になり、受給額は18万4000円です。
繰下げ待機中の人が死亡すると
では、繰下げ中の人が死亡したら、繰下げていた年金はどうなるのでしょうか? 例えば、年金を70歳から受給するつもりで繰下げ待機中だった人が、68歳で死亡したようなケースです。 ■遺族年金は増えない 老齢厚生年金の受給権者が死亡した場合、死亡した人に生計を維持されていた一定範囲の遺族に遺族厚生年金が支給されます。遺族年金の額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3ですが、繰下げ増額分は反映されません。死亡した人が、年金の繰下げをしていたかどうかにかかわらず、遺族厚生年金は同額です。 ■未支給年金を受給できる 「せっかく年金の繰下げをしていたのに、遺族年金額が増額されないなんて損だ」と思うかもしれません。しかし一定の遺族は、死亡した人が受給しなかった老齢年金(未支給年金)を一括で受け取ることができます。 ■未支給年金の額は 遺族が受け取る未支給年金は、死亡した人が「65歳から死亡するまで」の老齢年金、つまり繰下げをしなければ受給できたはずの老齢年金額です。68歳で死亡した場合、遺族が受け取る未支給年金は、65歳以降の3年分になります。年金の繰下げをしていた場合でも、未支給年金が増額されることはなく、65歳時点の額により未支給年金が計算されます。 なお、未支給年金を受給できるのは、死亡した人の配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹・3親等内の親族のうち最先順位者です。