アナウンサー内定取り消しで日テレを提訴 「内定」の法的な性格とは? 弁護士・蒲俊郎
ちなみに、仮にこの女性が裁判で勝った場合には、来年4月以降の社員としての地位が確認され、他の新入社員と同様に、日テレで勤務することになります。裁判で闘った相手の支配下に置かれるわけで、社内の人事配置などの権限は会社が有していることから、この女性が希望する処遇を受けられるかは疑問です。そういった現実から、内定取消の事案では、裁判でも、入社そのものより慰謝料等の損害賠償を求めるのが一般的かと思われます。入社にこだわる、本件のような訴訟は珍しいのであり、今後の推移が注目されます。 なお報道によると、日テレが内定を出したのは昨年9月で、その後この女性は就職活動の機会を事実上奪われたにもかかわらず、今年5月末の突然の内定取消で、女子アナになる夢を絶たれた訳です。3月には、日テレも、女性からの自主申告で、クラブでのバイト歴を知ったとのことであり、このような双方が傷つく形ではない、別の形の解決を図ることができたのではないかと思うと残念な気がします。 --------------- 蒲俊郎(かば・としろう) 弁護士、桐蔭法科大学院・大学院長。多数の企業の顧問として日々活動するほか、上場企業3社の社外監査役なども務める。他方、多忙な弁護士業務の傍ら、法科大学院のトップとして、次の時代を担う法曹の育成にも注力している。著書に『おとなのIT法律事件簿』『新・第三世代ネットビジネス~新たな潮流に対応できる法務・マーケティング』など。