住宅ローン金利の上昇は年収増でカバーできるか、年収と金利の関係を徹底シミュレーション
ただ、現時点で比較可能な1~10月の数値で比較すると、2024年は2023年よりも18%程度低くなっており、2024年の市場規模が前年よりも低い水準になると推察される点に留意は必要である。 ■テレワーク浸透の影響 分譲マンション市場には、ほかにも変化がある。その1つがテレワークの浸透だ。 三井住友トラスト基礎研究所が2024年2月に実施した東京23区の居住者を対象とする調査では、約3分の1の人が「平均週1回以上のテレワークを今後も実施予定」と回答している。「テレワークを今後も実施予定」と回答した割合は住宅1次取得層である30代と40代がほかの年代よりもやや高く、自宅で仕事をすることが定着した世帯が一定数いることがうかがえる。
そうなると、これまでよりも広さを重視する世帯が増加していると推察されるが、首都圏の分譲マンション価格は高騰した局面にあり、求める住戸と購入できる住戸の間に差が生じやすい環境にある。この差が拡大すると実需向け住戸の売れ行き悪化につながる懸念がある。 こうした気がかりがある中で、2025年も金利に上昇圧力がかかる局面が継続する可能性が高い。そこで、金利上昇時に想定される影響に注目して、以下の2点についてシミュレーションを実施した。
■①価格などの条件が同じ場合、金利が1%ずつ上昇したときに、年収がどれくらい上昇している必要があるか? シミュレーションで用いた金利は変動金利の実勢に近い0.5%を採用している。頭金割合は20%、借入期間は30年、年間のローン返済割合は年収の25%、減税効果はすべて住宅ローン返済に充当する場合を想定(以下、同じ)。年収が1000万円で、金利が1%上昇したとき同じ条件で分譲マンションを購入する場合に必要となる年収をシミュレーションした。
その結果、必要となる年収が約1157万円となり、15.7%の差が生じた。また、金利が2.5%、3.5%と上昇していくと、必要となる年収は約1328万円、約1511万円と大きく上昇する。 これは金利が1%上昇することで実需の住宅購入力が15%前後も低下することを示している。高騰している現在の価格水準のままで金利が上昇すると、購入できる実需のボリュームが大きく落ち込む可能性が高いことを示唆している。