首都圏の中学受験熱が落ち着いても、埼玉だけはなぜ人気が高まるのか
中学受験のトレンドとして、埼玉に所在する学校の受験者数の増加がある。今年の首都圏全体の受験者数は微減だが、埼玉の2023年度入試が4万6,228人だったのに対し、2024年度入試は5万5,428名と1万人近く増えている。埼玉の入試は1月に行われるため、かつては「2月の東京入試に向けて、練習のために埼玉で受験する」というケースが多かったのだが、それとは異なるトレンドが2024年受験では見受けられた。 中学受験の過熱傾向も落ち着きを見せている中で、なぜ埼玉の中学受験に活気があるのかについて、栄光ゼミナール入試情報センター責任者の藤田利通先生にお話を聞いた。 【グラフ】栄東中学校の合格者が一番多い塾はどこ? 塾別合格者数の推移を見てみる
「通うことを前提とした」埼玉県の中学校への受験が増えた
――今年は埼玉の中学校に受験生が集まったことが話題になりましたが、やはり開智所沢の開校の影響でしょうか。 藤田:開智所沢は、開智と一度に両方が受験できるということで、約8,000人の受験生が集まりました。 新規開校といっても、開智という実績のある学校の系列校ですから、内容がしっかりしている安心感もあっての人気でしょう。入学手続きをした受験生の数も多く、「お試し受験」ではなく、通うことを前提に受験したケースも多かったことがわかります。場所も東所沢なので、東京の西武沿線やJR沿線からアクセスがよく、今後も人気を集めそうです。 ――他にも人気の注目校はありますか。 藤田:栄東は安定した人気で、毎年1万人を超える受験生が集まりますが、今年も前年度比で受験生が149人増えています。浦和ルーテルは青学の系属校ということもあって、人気が高まっています。英検を利用した入試方法もあるのも、注目が集まっている理由の一つです。特にさいたま市は、小学校の英語教育に力を入れているという土地柄ともマッチしています。 ――東京の受験生が埼玉の学校を多く受けたといわれますが。 藤田:淑徳与野は1月と2月に入試を行います。1月13日入試は受験生が1,560人、2月4日の受験生は149人です。2月は東京の受験生が受験しないと推測できますから、それだけ1月は東京勢が多く受験したことがわかります。淑徳与野もそうですが、東京からアクセスがよい京浜東北線沿線の学校が人気ですね。西武池袋線沿線の学校も、同じ理由で受験生が集まります。 最近では東京以外の地域からの受験生も増えています。今年は千葉の流山エリアからの受験生も目立ちましたね。武蔵野線などから乗り換えなしで通えるということで、受験するケースもあるようです。 1月に埼玉で入試を行う学校は、合格しても入学金の納入期限が2月以降で、東京の学校の合格発表があってからなんです。栄東は2月9日が納入期限で、大学付属校である立教新座でも2月2日の16時59分までですからね。 他にもメリットはあります。たとえば合格発表の時に得点を開示し、全体の中での順位を示してくれる学校がいくつもあるので、2月の東京の入試に備えて、今どの位置にいるのかを把握することができます。浦和実業、大宮開成、開智、開智所沢、埼玉栄、栄東、西武文理などが得点開示をしています。そういった配慮がなされていることもあって、埼玉の学校は受験生を増やしているのだと思います。 以前ですと、東京在住の受験生は埼玉で1校だけ受けておくことが多かったですが、2校、3校と受けるケースも増えてきました。午前に栄東を受けて、午後に淑徳与野を受験するというようなパターンでしょうか。