首都圏の中学受験熱が落ち着いても、埼玉だけはなぜ人気が高まるのか
埼玉在住の受験生の東京受験は減少傾向に
――埼玉在住の受験生の動向はいかがですか。 藤田:東京の受験生が埼玉の学校を受験するケースは増えていますが、反対に埼玉在住の受験生が東京の学校を受ける数は減少しています。埼玉に私立中が増え、県内でもわが子に合った学校選びができることがわかってきたので、わざわざ東京まで出なくてもいいと判断されるご家庭が増えているのでしょう。 埼玉の学校は大学受験に向けたサポートが手厚く、成績が振るわない際のフォロー体制もしっかりしている印象があり、それが進路実績にも表れてきているように思います。また、理数コースや外国語コースなど、さまざまなコースを設けている学校が多いので、目的に合った学びができる点も魅力でしょう。 ――コース別というと、今年は淑徳与野が医進コースを開設して注目を集めました。女子校の動向はいかがでしょうか。 藤田:淑徳与野の医進コースは県外からの受験生も多く、御三家との併願も目立ちました。1月11日の午後にも入試を行ったので、埼玉の他の学校とも併願がしやすかったようです。淑徳与野は学習面の面倒見がいいため人気が高く、第1志望にするケースも多くなっています。 一方、浦和明の星は東京のトップ層の女子が受験に来るので、難度がとても高く、受験生の数は伸びていません。大妻嵐山は進学コースを設置したり、適性検査型入試を採用したりと新しい試みをしています。
落ちつく都立一貫校人気。一方、埼玉は公立一貫校もまだまだ倍率が高い。
――公立一貫校の動向はいかがですか。東京では都立一貫校の受験者数は落ち着いているように見えますが。 藤田:東京だけでなく、千葉、神奈川では公立一貫校の受験生が減っていますが、埼玉は増えています。埼玉の公立一貫校の最難関、市立浦和は2023年度の倍率が男子7.52倍、女子8.10倍だったのが、2024年度は男子が7.58倍、女子が8.68倍と増えています。都立一貫校の最難関、小石川の今年の倍率が男子3.61倍、女子が4.09倍ですから、いかに市立浦和の倍率が高いかが分かっていただけるかと思います。 ではなぜ、埼玉は公立一貫校が人気なのか。その背景としてはまず、県内の中学受験生が増えていることがあると推測しています。公立中高一貫校を第1志望にする生徒たちは、浦和実業、武南、狭山ヶ丘、聖望学園といった私立の適性検査型入試を併願で受け、第1志望の公立中高一貫校が不合格だった場合、そちらの私立に進学するケースも増えています。2021年に川口市立が開校したことで、武南の受験生が大変増えているのは併願校として選ばれているからでしょう。 なぜ埼玉だけ、公立一貫校の受験生が減らないのかというと、難度がそこまで高くない印象があるからでしょう。都立一貫校は合格のハードルが高いという事実が周知されているので、敬遠するトレンドがありますが、埼玉だとまだまだ合格の可能性があるという印象かもしれません。しかし実際には、先に挙げた市立浦和はハードルが高くなっており、十分な対策をしてもそう簡単に合格できる学校ではありません。 ――東京では「難易度よりも校風」「子どもに合った学校に入れたい」という方針が主流になってきていますが、都外だと「偏差値60以下の市立中学には進学させたくないので、地元の公立中学に進学し、高校受験でリベンジをする」というケースも目立つと聞きます。 藤田:大宮より北ですと距離的なものもあり、「栄東だけを受けて合格に届かなかったら地元の公立中学に進学」というパターンも見受けられます。通学時間を考えると、東京の学校は検討しないことも多いでしょうから。 一方、大宮より南では中学受験率が高くなってきていますね。中には半数が受験をするという小学校もあります。そのエリアですと、東京型の受験方針のご家庭が多いですね。校風やカリキュラムが「わが子に合うか」で学校を選択する傾向があり、せっかく中学受験をするのだから、受かった学校に通わせようという方針です。そういったご家庭が選ぶのが埼玉県内の学校になっていることもあって、埼玉の学校は受験生を増やしているわけです。 埼玉の学校の人気が高まる中では、併願の戦略が重要になってきています。栄光ゼミナールは首都圏全域に校舎があるので、その校舎の周辺の私立中学だけではなく、市外や県外の学校の正確な情報提供を今後も行っていきたいと思います。
ダイヤモンド教育ラボ編集部