Wギャル対談「フェティッシュでバイオレンスなイメージ」献鹿狸太朗×湯上響花が語る『みんなを嫌いマン』
蝶よ花よと育てたはずなのに……!?
──さて、湯上さんは献鹿さんの熱心なファンということで。実際に対面していかがですか? 湯上:「本当に実在している!」っていう、まだちょっとフィクションを見ているような感じです。私が本の中で見る献鹿さんはフェティッシュでバイオレンスなイメージがすごく強くて、 色でいうとショッキングピンクみたいな感じだったんですが、実際に会うと天使のようで。 献鹿:(笑)。 ──ちなみに献鹿さんがギャルだというのは知っていました? 湯上:『赤泥棒』を読んで「なんだこの文章!?」って驚いて検索した記事にお顔が載っていて「え?」って頭がフリーズしました。検索し直してもやっぱりそうで、本当に私は雷に打たれたように虜になってしまいました。 ――確かに作風にバイオレンスなイメージはありますね。どうしてそういう世界が書けちゃうんでしょう。 献鹿:なんだろう。わからないけど、単純に好みなのかもしれない。お母さんにはいつも「蝶よ花よって育てたのに、 なんでこんなバイオレンスなのを書くんだろう」って言われて(笑)。 湯上:「嫌い」ってものを書くのが上手だなって感じたんですよね。 献鹿:口癖みたいに「一番好きなの何? 一番嫌いなの何?」って聞いちゃうんですよね。 だから好きとか嫌いをよく意識してるかもしれない。好きなもののことを考える時は楽しいし、一番嫌いなものを考える時も楽しいし。
小説を書くのは、普段の自分とは別の自分
──新刊『みんなを嫌いマン』は、主人公である正義の味方「みんなを守るマン」(通称:みん守)が周囲の心無い声に葛藤し苦しみまくる物語です。ああいう着想自体はどこから? 献鹿: 3歳くらいの時に「町を守る怪獣」っていう話を考えて、それをお兄ちゃんに泣きながらしてたっていうのをお母さんから聞いたんです。自分では全く覚えてないんですけど、「町を守る怪獣になる妹がいるお兄ちゃんの話」だったようで、それちょっと面白いなってところからですね。 ──主人公の至(注:みん守の普段の姿である大学生)が終始追い込まれまくりなのが強烈ですね。 献鹿:まだ追い込むのか、みたいなのは書きたかったですね……ただ私の場合、普段の時と小説を書いてる時の自分は全然違うんで、どうやって書いたかとかあんまり思い出せないんですよ。 湯上:ええ! ──じゃあ今ここで「キャー」とか言ってる感じとはまた別人ですか? 献鹿:そうですね。普段、友だちと遊ぶ時とは全く別人が書いてる感じです。だから本になって「こんなこと書いてたんだ」みたいになります。自分が一番最初の読者みたいな感じで、話が出来上がっていくのを読みながら書いてるというか、書きながら読んでるというか。 湯上:えーヤバー! 今めっちゃ鳥肌立ちました。本を書く時はあらすじとか登場人物を考えたりして作者が動かしていくものだと思ってたんで。 献鹿:読み直すと「分かる分かる」って感じなんです。深層心理にあるというか、書く時はもっと深い自分でやっているのかもしれない。でも書くのは普通に家でスマホです。タイピングは遅いし指疲れるし、ネイルしてると何かやりにくいし。私はフリック入力の方が絶対速いから。 ──友だちからは何か言われますか? 献鹿:あんまり聞かないかも。友だちには小説とか書いてることはほぼ内緒にしてて、本当に数人にだけ言ってる感じで、だから私が文字なんか書けると思ってない友だちも多いと思います。 湯上:えええーウソでしょ!? 献鹿:何してるかあんまりわかんない子だな、と思われてると思う。 ──別に周りが認めてくれるより、作品が世に出ればいいって感じですか? 献鹿:実際の知り合いじゃなくて、全然知らないどこかの誰かが認めてくれる方が嬉しいかもしれない。実際の知り合いに見られると恥ずかしさもあるし。「小説家は顔を出すものだ」って担当の方に説得されて顔出ししましたけど、最初はすごくドキドキでした。 湯上:大正解だと思います! 私は本当に嬉しい!