夜の照明で街の木が昆虫の好まない硬い葉に、「光害」で生態系に影響の恐れ、研究
硬い葉と都市環境
植物が街灯にこうした反応を示す理由はまだはっきりとはわかっていない。しかし、植物は光を成長に利用するため、夜間の人工光は木々が光合成に費やす時間を不自然に増やしている可能性があると、中国科学院の生物学者で、今回の論文の著者である張霜(チャン・シュアン)氏は説明する。 光の種類もまた、植物によるリソースの使い方に影響を与える。たとえば、太陽光から赤い光を吸収することで、植物はより硬い葉を生やすことがあるが、夜間の人工光の場合は、こうしたメカニズムの働きも変わるだろうと、シーラード氏は言う。 つまり、今回の研究対象となった木々は、北京の街灯にかかわる何らかの要素によって、葉を硬くする化合物により多くのリソースを割くよう促されている可能性がある、ということだ。 この研究は、ほかの植物種にまで範囲を広げる必要があると、張氏は言う。「もし夜間の人工光がほかの樹木種の葉も硬くしているのであれば、昆虫にとって状況は厳しいと言えるでしょう」 植物や、植物と動物との関係における変化は、都市の生態系全体に大きな影響を与える可能性がある。 十分な食べものがなければ草食昆虫は死んでいく。その結果、草食昆虫を食べる昆虫が減り、その昆虫を食べる鳥が減るといったように、食物連鎖の上の方まで影響が及ぶことも考えられる。 草食昆虫は、食物連鎖にとって重要なだけでなく、花粉媒介者としても生物多様性に貢献している。彼らはまた、腐敗する植物を食べることで、葉を分解して栄養素を土壌に戻す手伝いをしている。都市では、昆虫に支えられている健康な土壌と植物は、人間にもよい影響を与える。街の植物は日陰を提供し、都市の中に閉じ込められた熱を冷ます。 夜間の光の悪影響をできる限り小さくするには、単に光の強さを下げればよいと、張氏は言う。夜間の明るさと、昆虫によって葉がどの程度食べられたかの間には直線的な相関関係があるため、光の強度を下げるだけでも、昆虫の食欲をそそる葉が育つ可能性がある。 都市においては、必要なものに、必要な時にだけ光を当てるようにすべきだと、シーラード氏は言う。人感センサーを活用したり、光が周囲に漏れないように街灯に覆いを設置したりするのも有益だ。 各家庭でできる方法として、生物学者らは、必要のない照明を消すこと、人感センサー付きの照明を使うこと、必要な場所だけに光が当たる器具を選ぶこと、家の周囲では昆虫にとって最も安全と思われる琥珀(こはく、アンバー)色の照明を使うことなどを勧めている。
文=Olivia Ferrari/訳=北村京子