韓国「弾劾」を契機に次期大統領選への攻防がスタート、焦点は憲法裁判所弾劾審理にどれだけかかるか
与党側が憲法裁判所での長い審理を望むのは、右派の体制立て直しのほかにも理由がある。野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表にかかわる裁判の判決が2025年5月中旬にも確定する可能性があることだ。 ■野党代表も「残り時間わずか」? 李氏は公職選挙法違反で2024年11月15日に一審で有罪判決を受けた。同法違反で有罪となった場合、最長6カ月以内に最終審の判決を出さねばならないことになっている。一審判決が確定すると、李氏は向こう10年間、被選挙権がなくなり、大統領選には出られなくなる。
尹氏の弾劾訴追案が可決され、与党「国民の力」の韓氏は12月16日、党代表を辞任すると発表した。 その際、韓氏は「戒厳が誤りだったからといって(共に)民主党と李在明代表の暴走や犯罪疑惑が正当化されるわけでは絶対にない」「李代表の裁判のタイマーは止まらずに進んでいる。残り(時間)はわずかだ」と語った。 自らを大抜擢し、法相にすえた尹氏に弓を引いたかたちとなり、韓国南東部の右派地盤の大邱(テグ)や釜山(プサン)などでは「裏切り者」とののしられる韓氏だが、もっぱら党内では次期大統領選に与党候補として出馬することに意欲を持っているとみられている。
これに対し、野党「共に民主党」の金民錫(キム・ミンソク)最高委員は韓氏が辞任した同じ日、「すでに憲法裁判所の弾劾決定要件は十分だ」「憲法裁判所が迅速な決定をすると信じる」と述べ、審理を促した。 与野党内には、韓氏や李氏以外にも、次期大統領選の有力候補とみられる人物がおり、それぞれ発言を始めている。 憲法裁判所は12月16日、尹氏の弾劾審判で初の弁論準備期日を年の瀬の2024年12月27日に実施すると明らかにした。検察など当局の尹氏に対する捜査も速度を増しており、「非常戒厳」に端を発した韓国政界の攻防はますます過熱しつつある。
箱田 哲也 :朝日新聞記者