【60歳以上は要注意】1日10時間座る生活で認知症のリスクが高まる
座ったり横になったりしている時間が長い人と白血球染色体の端にある「テロメア」が短い人は認知症になる可能性が高い
認知症はなぜ起こるのか。その謎に迫る新たな洞察が、2023年秋に相次いで示された。この病気を招く要因を特定する研究が2件、発表されたのだ。 【動画】インタビュー中に表れたプーチン「体の異変」...いうことを聞かない足の動きに「何が起きてる?」 1つは、9月11日付の一般精神医学誌に発表された研究。染色体の末端にある小さなキャップ状の部分(テロメア)が短くなると、認知症のリスクが高まる可能性があることを示した。 翌12日にJAMA(米国医師会報)に発表された研究は、座っている時間が長いと認知症リスクが高まる可能性があると明らかにした。これらの研究は認知症の発症のメカニズムと、それを阻止する方法をさらに究明するのに役立つかもしれない。 認知症とは、脳の損傷や変化の結果、脳機能が低下する症状。アルツハイマー病は認知症の一種であり、アミロイドβとタウという2種類のタンパク質の異常な蓄積によって起こる。認知症を発症させる主な要因の1つは加齢であり、患者は高齢者が多い。 一般精神医学誌に掲載された論文はこの点に踏み込み、テロメアの短縮により認知症のリスクが高まることを発見した。テロメアとは、染色体の末端にある小さな構造。機能的遺伝子が複製中に失われるのを防ぐが、長年の細胞分裂と染色体複製の結果、年齢とともに短くなる。 論文は、大規模な生物医学データベースであるUKバイオバンクから抽出した37~73歳の患者のデータを調べた。すると白血球のテロメアが短い人は、最も長い人に比べて認知症と診断される可能性が14%高く、アルツハイマー病と診断される可能性は28%高いことが分かった。 「私たちは『白血球テロメア長(LTL)』が認知症リスクに関する老化バイオマーカーとなることを発見した」と、論文の著者らは書いた。「本研究で得られた知見は、LTLが脳の健康を示す指標となり得ることを示している」 「加えてLTLの短さは神経心理学的な状態の悪化を示すと見なされているので、LTLを測定することが一般の人々に健康的なライフスタイルの選択を促す手段として考えられるかもしれない」 一方のJAMAの論文は、認知症を招く要因として、日常生活で座っている時間の長さに着目した。研究者らはUKバイオバンクのデータなどを用いて、座りがちな行動を1日10時間以上取っている60歳以上の人は、座っている時間が短い人に比べて認知症のリスクが高まることを明らかにした。 「1日に約10時間にわたり座りっぱなしでいると、認知症のリスクは有意に増加した」と、論文著者の1人である南カリフォルニア大学ドーンサイフカレッジ文理学部のデービッド・ライクレン教授(生物科学・人類学)は語った。「1日10時間の座位行動は認知症のリスクを8%増加させ、1日12時間の座位行動は認知症のリスクを63%増加させていた」