【60歳以上は要注意】1日10時間座る生活で認知症のリスクが高まる
脳血流の低下が原因?
座位行動とは「座っていたり、横になっている状態」で行われる「エネルギー消費量の低さ」を特徴とする覚醒時の行動と定義されていると、ライクレンは言う。 「毎日10時間以上を座位行動で過ごすと、認知症リスクが急速に上昇し始めることが分かったのは驚きだった」と、著者の1人でアリゾナ大学脳研究所のジーン・アレキサンダー教授は述べている。「座位行動と認知症リスクの関係を決定付けるのは、座位行動の総時間であることが示唆された。しかし重要なのは、1日10時間程度より短い座位行動はリスクの増加に関係していなかったということだ」 途中で立って動いた時間があったとしても、認知症リスクに影響するのは座っている総時間だけであることも分かった。「長時間座り続けるのを避けるため、30分ごとに立ち上がったり歩き回ったりすべきだというアドバイスをよく聞く」と、ライクレンは語る。だが研究では「どれだけ連続して座っているかはさほど重要ではないことが分かった」という。 座っている時間が長いライフスタイルが認知症リスクと関連している正確な理由は不明だと、著者らは語る。その背後にあるメカニズムを完全に理解するにはさらに研究が必要だという。 「脳血流の低下や、座りがちな生活と心代謝性疾患の因子との関連が、認知症リスクの上昇に関与している可能性はある。今後の研究ではこのメカニズムに焦点を当てることになるだろう」と、ライクレンは言う。 テロメアの長さと認知症との関連についても、他の細胞タイプのテロメアの長さを調べたり、テロメアの長さの変化によって認知症リスクがどう変わるかを調査するなど、さらに研究が必要だと一般精神医学誌の論文の著者らは説明している。 「いくつかの限界を考慮しなければならない」と、著者らは書いた。「LTLは47万人近い参加者について、研究開始の時点で1度測定しただけだ。今回の研究結果からは、LTLの変化が認知症発症の可能性に影響を及ぼすかどうかは明らかにできなかった」 さらに認知症の診断は電子カルテのみから取得したため、認知症の症例が完全にカバーされていない可能性があるという。それらを踏まえた上で「因果関係に関する結論は慎重を期すべきだ」と、著者らは語っている。 <ニューズウィーク日本版別冊『世界の最新医療2024』より>
ジェス・トムソン