府中牝馬Sを制したブレイディヴェーグとルメール騎手（撮影・鈴木正人）

＜府中牝馬S＞◇14日＝東京◇G2◇芝1800メートル◇3歳上牝◇出走15頭◇1着馬にエリザベス女王杯優先出走権 　完全復活近し－。2番人気のブレイディヴェーグ（牝4、宮田）が大外から突き抜けた。昨年のエリザベス女王杯以来、2度のレース回避をへて、11カ月ぶりの実戦で勝利を挙げた。休養前同様の瞬発力を示し、並み居る強豪を撃破した。勝ち時計は1分44秒7。鞍上のクリストフ・ルメール騎手（45）は前日の秋華賞（チェルヴィニア）に続き、同じ勝負服で2日連続の重賞V。今後は体調次第で次走を探っていく。 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　府中の杜に一陣の風が吹いた。周囲の心配をよそに、ブレイディヴェーグが突き抜けた。ルメール騎手は「馬の上も気持ち良かったです」と大外一気を振り返った。後方の10番手。体を抜ける風が心地いい。唯一のG1馬は11カ月ぶりを忘れさせた。上がり3ハロン32秒8は最速タイ、ゴール目がけてラップを上げていった。 　何よりも、無事を願って送り出したはずだった。同馬を所有するサンデーレーシングの吉田俊介代表は「今日は無事に帰ってきてくれれば、くらいに思っていました」と胸中を明かす。春のドバイ遠征を右飛節の炎症で取りやめ、仕切り直した新潟記念も後肢の筋肉痛で回避した。過去には2度の骨折もあり、脚元には細心の注意を払い続けた。わずかデビュー5戦で昨秋のエリザベス女王杯を制した大器。結果的にモノが違っていた。宮田師は「頑張りにただただ感動しましたし、馬に対する敬意しかありません」と感服した。 　秋晴れの3連休最終日。今年2番目に多い5万7500人の来場者がG1馬の復活を見届けた。前日に秋華賞を制したルメール騎手は「能力はチェルヴィニアと同じレベル。コンディションが上がったら、トップレベルでも勝てる」と2冠牝馬と同等の評価を与えた。出脚が速くないのはいつものこと。休み明けでもあり、直線は慎重に外へ誘導した。現役最上位の総合力はこの日4勝の男によって引き出された。 　次走への明言はあえてしなかった。宮田師は「想像を超えていましたね。何もないことを祈って、無事にいければ。正直、使って次か、その次かと思っていたので。でも、上がってからの息は良かった」と話した。選択肢を広げるために12月の香港国際競走への登録は行うが、全ては体調次第。決して慌てず、急がず、頂点を見据える。【松田直樹】 　◆ブレイディヴェーグ　▽父　ロードカナロア▽母　インナーアージ（ディープインパクト）▽牝4▽馬主　（有）サンデーレーシング▽調教師　宮田敬介（美浦）▽生産者　ノーザンファーム（北海道安平町）▽戦績　6戦4勝▽総収得賞金　2億2687万6000円▽主な勝ち鞍　23年エリザベス女王杯（G1）▽馬名の由来　広い道（オランダ語）