「つながりを”作り出す”」時代の先端を走った作家・森崎和江 3回忌にファン集まる
大畑凜(おおはた・りん):1993年生まれ。専攻は社会思想、戦後思想。大阪府立大学大学院単位取得退学。現在、日本学術振興会特別研究員PD、大阪大学特任研究員。 ■一線の文学研究者が語る「森崎和江」論 渡邊教授が紹介した大畑凜さんも大阪大学の研究者で、本のタイトルには「インターセクショナリティ」というちょっと難しい言葉が使われています。 インターセクショナリティとは「交差性」と訳されます。何かと何かが交差した時に、そこには別の変化が生まれてくる。例えば、人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティ、国籍、世代…いろいろな立場の違いがあって、それが交差する時にそれぞれが関係して人々の経験を作っていくという考え方です。誰でも、いろんな抑圧が複数重なって、生きる困難さが生まれている。例えば、人種問題が解決しても女性の問題が解決できていなければ、その人の抱えている困難さは解決できません。困難さは両方あること、3つも4つもあるということ、全体を見ていかないといけないというのがインターセクショナリティの考え方です。大畑さんが見る森崎和江には、闘争にかかわる様々な論点が交差しているということでした。 大阪大学特任研究員大畑凜さん:森崎さんの60年代70年代を読んでいくと、基本的には「筑豊」という場所に根ざして活動を続けられていたわけですけれど、その中で例えば、本土復帰直前の沖縄の状況に、どうやったら筑豊や北九州にいながらつながれるだろうか。つながることを考える中で、当時の若い労働者の問題にコミットしていく。自分たちの困難さや戦いと、遠く離れているように思える土地の人々や戦いと、どうやったらつながれるだろうか。つまり、つながりを見出すんじゃなくて、作り出していくような。そういう中で、実はこういう風な形で社会の構造とかも抑圧が交差してるんじゃないかと発見されていくところ。森崎さんの思想の中に交差性というのがあるとすれば、そういうところがあるんじゃないか。