ロシア軍がクルスク州で反撃開始 ウクライナ、危険冒した侵攻作戦で正念場
ウクライナ軍の精強な部隊が8月6日、ロシア西部クルスク州に奇襲を仕掛け、国境沿いの防御線を突破した。戦線が安定化するまでの怒涛の数週間に、ウクライナ軍部隊はロシア軍の練度の低い徴集兵らを敗走させ、州内の1000平方kmほどの地域を占領した。侵攻部隊の兵力は現在までに各最大400人規模の12個前後の大隊となっている。 ジョン・ヒーリー英国防相は、ウクライナ軍にクルスク州の一部を支配下に置かれたことで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は「プレッシャーにさらされている」と指摘している。 恥をかかされたプーチンはロシア軍に対し、クルスク州でウクライナ軍に占領された地域を10月1日までに奪還するよう命じた。ロシア軍はそれに忠実に従い、9月11日、ウクライナ側支配地域の西の端で反撃に乗り出した。フィンランドのアナリスト、ヨニ・アスコラは「クルスク州からウクライナ軍を駆逐するためのロシア軍の反攻が本格的に始まった」とソーシャルメディアに書いている。 ロシア軍は州内を流れるセイム川のすぐ南にあり、ウクライナとの国境から北へ12kmほど離れたスナゴスチ村を攻撃した。主力はロシア軍第51親衛空挺連隊の戦車やその他の装甲車両少なくとも8両だった。反撃開始から数時間後の時点では、村の支配がなお争われている。ウクライナの調査分析グループ、ディープステート(DeepState)は「クルスク州におけるわが軍集団の左翼の状況は悪化した」と報告している。 ロシア軍の別の部隊は並行して、ウクライナ軍の右翼側のウラノク村に進撃している。 ロシア軍がどのようにしてスナゴスチ村に進んできたのかはよくわからない。ロシア側の支配地域からこの村へ入るルートは2つある。北西からセイム川を渡るルートと、北にあるコレネボ町から地上で南下するルートだ。今回使った可能性がより高いのは後者だろう。というのも、ウクライナ軍はこれまでに、クルスク州でセイム川に架かっていた永久橋をすべて破壊し、ロシア軍が設置した浮橋(ポンツーン・ブリッジ)もほとんど、あるいはすべて破壊しているからだ。 ウクライナにとっては、慎重な対応を要する時期に、慎重な対応を要する状況が新たに生まれたかたちになる。ウクライナ軍参謀本部は、クルスク州への越境地上攻撃を命じるという大きな危険を冒した。折しもウクライナ東部ドネツク州で、ロシア軍の強力な第2諸兵科連合軍が、複数の重要な補給線にまたがるウクライナ軍の守備拠点、ポクロウシク市に向けて着実に進軍してきているさなかにだ。