メッシのドリブルは「後出しジャンケン」 松井大輔がピッチに仕掛けられた「罠」を徹底解剖
【メッシのようなドリブルを習得するには?】 それともうひとつ、メッシのドリブルのカギになっているテクニックが、ステップです。 ドリブルで相手を抜き去る瞬間は、右側に抜く場合は左足、左側に抜く場合は右足のステップが重要になるので、左利きのメッシの場合は、右足のステップがポイントになります。 一般的には、トントンっと細かく2ステップを踏むのがコツとされています。ですが、メッシのステップは見極められないほど細かくて速いのが特徴で、そこに相手の逆を取り続けられる秘密が隠されています。 その細かく速いステップをしながら、何度もボールをタッチして、トップスピードでも自分の間合いをキープするので、相手からするとボールを奪う隙が見つけられない。メッシが左利きなので、左を消そうとしても、ワンフェイントを入れられると、どうしても体勢が崩れてしまい、メッシに逆を取られてしまいます。 さらに、メッシには二手、三手先を読む能力もあって、ドリブル以外にも、パス、シュートという高性能な武器もある。だから、メッシは『誰にも止められない選手』なんです」 松井氏の解説から判断すると、メッシのドリブルはメッシだけのものなので、誰にも真似はできないと言えるだろう。 ただ、もしメッシのようなドリブルの習得を目指す場合、何をすればいいのか──。子どもを指導する場合のポイントを、最後に松井氏に聞いてみた。 「もちろん、教えることによって第2のメッシを作ることは難しいと思います。ただ、相手の逆を取る時に大事なボディバランスや細かいステップなどは、たとえばダンスなどをして身につけることも、ひとつの方法だと思います。 あるいは、ボールを手で持ったままボディフェイントを繰り返し、対峙する相手の重心を傾けてから逆を取る──というトレーニング方法もあります。足でボールを扱うわけではありませんが、子どもたちにメッシになった気分を味わわせることはできると思います。 もうひとつは、たくさんボールタッチしながら、自分の間合いでドリブルし続けるトレーニングも大事です。たとえば、たくさんボールに触りながら、自分の2メートル範囲内でドリブルし続けてみるのもいいと思います。 子どもの頃からそういったテクニックを身につければ、メッシになれなくても、メッシのドリブルに近づけるはずです」 (第3回につづく) 【profile】松井大輔(まつい・だいすけ)1981年5月11日生まれ、京都府京都市出身。2000年に鹿児島実業高から京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)に加入。その後、ル・マン→サンテティエンヌ→グルノーブル→トム・トムスク→グルノーブル→ディジョン→スラヴィア・ソフィア→レヒア・グダニスク→ジュビロ磐田→オドラ・オポーレ→横浜FC→サイゴンFC→Y.S.C.C.横浜でプレーし、2024年2月に現役引退を発表。現在はFリーグ理事長、横浜FCスクールコーチ、浦和レッズアカデミーロールモデルコーチを務めている。日本代表31試合1得点。2004年アテネ五輪、2010年南アフリカW杯出場。ポジション=MF。身長175cm、体重66kg。
中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi