石川さゆりが大トリでもよかった 紅白歌合戦、安易な企画はやめ歌本来の力を信じてみては
NHKは、紅白に分かれた合戦形式が時代にそぐわなくなったと考えているのか。だとしたら紅白どちらにも属さない特別枠を増やすのではなく、ジェンダー混合で紅白に分け、歌合戦という伝統のフォーマットは守ったほうがいいのではないか? この特徴を捨てたら、ただの歌番組になってしまう。
もっとも昨年、紅白の勝敗に関心があったのは審査員の内村光良ぐらいだったかもしれない。
昨年は白組が勝った。能登への思いを歌った紅組の坂本、石川の熱唱は勝敗のゆくえとは無関係だったようだ。
■課題は多くても
ドミノ倒しやけん玉の世界記録挑戦など歌と何の関係があるか分からない余興をいつまで続けるのだろう。
昨年の司会陣は、ばたつく場面が多く騒がしかったのも気になった。
12月30日のTBS系「輝く!日本レコード大賞」は、俳優の川口春奈を相手に安住紳一郎アナが落ち着いて進行した。NHKは、もう少し鈴木奈穂子アナに任せてもよかったのではないか。
そのレコ大の会場では、「紅白は企画ものが増えすぎて真剣に歌う場ではなくなった。NHKは歌の力を信用していないのではないか」という音楽関係者の嘆きも聞いた。
なるほど。紅白よ、もう一度、歌本来の力を信じてみたらどうか。その年にふさわしい企画ならまだしも、テーマパークとタイアップするなど民放のバラエティー番組まがいの安易な企画ならもういい。
音楽番組としての出だしは上々だった。ガールズグループのME:I(初)が踊り、演歌の天童よしみ(29回目)の熱唱に続いて、こっちのけんと(初)がラップを決めた。伝統と革新が混在し、歌の多様性を示せることこそ紅白本来の魅力だ。
星野源の当初の選曲オファー問題、B’zの音響機材トラブルなどもあった。
視聴率が発表されると、また、さまざまな声が上がるだろうが、それでもNHKには放送200年を迎えるときにも公共放送らしい紅白を続けていてもらいたい。歌で1年を締めくくる平和な時代が永遠であってほしいから。(石井健)