【躁うつ病との戦い】一番しんどくて危険な「混合状態」をボクシングにたとえて描く→躁うつ病の作者が感じる日常に衝撃【作者インタビュー】
「中学校2年生から高校1年生までのはっきりした記憶がない」 そう語ったのは、書評ライターや連句人として俳句や文芸情報をX(旧Twitter)で発信している高松霞さん(@kasumi_tkmt)。家族の不幸に無意識に追い詰められていた日々と、それにより発覚した躁うつ病との日々を綴ってもらい、その心情にぴったりな俳句とともにコミカライズ。 【漫画】本編をイッキ読みする 作画は、自らのことを「霊感のようなものがある人間」と紹介する漫画家・桜田洋さん(@sakurada_you)が担当。その柔らかで心に染み入る絵のタッチと、鮮やかな色づかいが魅力だ。今回、躁うつ病の「混合状態」と呼ばれる症状をボクシングにたとえて描く。何度もリングに立って戦おうとするのだが、手を繰り出せど繰り出せど、敵に届かない…。そんな心情に寄り添う俳句とともにお送りする。 ■少しは希望がほしい…俳句に込める作者の思い 今回の話で作者の高松さんが一番読者に伝えたいことは、双極症患者の脳や体が、どれだけめんどくさいかである。「躁状態」「うつ状態」だけではなく、躁とうつが混ざった「混合状態」があり、それが一番しんどく、また、躁うつ病の症状の中でももっとも危険な状態だという。 作中では「混合状態」のイメージとして、ボクシングを用いて表現されていたが、高松さん自身は合気道を習っており、その稽古の際に「パンチが当たらない」「畳に打ち付けられて身体中が痛い」「動けないけど動く」といった体験を何度もしており、その感覚に近いと感じたそうだ。しかし、合気道だと伝わらないと考え、漫画ではボクシングとして表現したとのこと。 1つ目の俳句「超巨大落椿にて圧死せむ」について、高松さんは「うつの時って、まさに『圧死』なんですよ。本当に動けないし、呼吸ができない。それが超巨大落椿によるものなのだとしたら、悪くなさそうだなって思いますね、一瞬だけ」と語る。 躁状態の時は、いわゆる「深夜のテンション」みたいなものが、昼夜関係なく1週間くらい続き、うつ期に入った時に「なんてことをしてしまったんだ、もう顔向けできない」という後悔の感情が1週間から2週間続き、とことん追い詰められるそうだ。 2つ目の俳句「散らかったままのキッチン星の降る」の、「散らかったまま」は、セルフネグレクトまで行くほど散らかっている状態で、その状態であっても、少しは希望がほしいという思いで「星の降る」を付けたという。 高松さんだからこそ表現できる世界と、俳句によって深まる情景をじっくり味わってみてほしい。 取材協力:高松霞(@kasumi_tkmt)