死亡届を出したら銀行口座が凍結される?凍結前にお金を引き出すリスクとは
7月26日に厚生労働省が公表した「令和5年簡易生命表の概況」によると、男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.14歳と男女ともに寿命が延びています。 ◆【写真2枚】どうしてもお金が必要なときはどうする?「預貯金の払戻し制度」とは 人生100年時代になりつつある現代では、ご家族と相続の話をする機会もあるかもしれません。 中には、「役所に死亡届を出すと銀行口座が凍結される」という話を聞いたことがある人もいるでしょう。 この記事では、死亡後に銀行口座が凍結されるタイミングや凍結前に預金を引き出すリスクについて、元銀行員の筆者が解説します。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
役所に死亡届を出したら銀行の口座は凍結される?
結論から言うと、死亡届を役所に届けても銀行口座は凍結されません。 銀行は、口座の名義人が亡くなったことを知ると、その時点で預金口座を凍結します。 しかし、死亡届を役所に提出した時点で口座が凍結されるわけではありません。口座が凍結されるのは、親族が銀行に連絡し、名義人の死亡を伝えた時点からです。 頻度としては少ないですが、銀行の担当者が新聞の訃報欄を見たり、葬儀が行われたことを知ったりして、銀行側から親族に確認を取ったうえで口座を凍結する場合もあります。 また、銀行間で名義人の死亡に関する情報が共有されることはありません。このため、亡くなった人が保有していたすべての銀行に届け出をする必要があります。ただし、同じ銀行の複数の支店で取引があった場合には、一度届け出をすればすべての支店の預金口座が凍結されます。 基本的に、銀行に届け出をしなければ口座は使える状態となっているため、届け出を出す前に口座から現金を引き出す、ということは可能です。 しかし、口座凍結の前に本人以外が現金を引き出すのはいくつかリスクがあります。
口座凍結の前に預金を引き出すリスク
口座凍結も前に預金を引き出すことは可能ですが、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。 ●家族間でトラブルになる可能性がある 口座凍結前に預金を引き出す行為は、相続手続きを経ずに行われるため、他の相続人から不正行為と見なされる可能性があります。これにより、相続人間での信頼関係が損なわれ、深刻なトラブルに発展することがあります。 また引き出された預金は本来、相続財産として遺産分割協議の対象となりますが、無断で引き出された場合、その預金の取り扱いについて相続人間で意見が対立する可能性があります。特に、使途が不明瞭な場合は問題が深刻化しやすいです。 ●相続放棄ができなくなる可能性がある 相続においては、基本的に故人の財産をプラスもマイナスも受け継ぐことになります。 ここで注意が必要なのは、預金を引き出す行為が「単純承認」とみなされる可能性があることです。単純承認とみなされると、たとえ後で多額の負債が発覚したとしても、限定承認や相続放棄を選択することができなくなる可能性があります。 つまり、相続人が亡くなった方の預金を引き出した時点で、全ての財産を受け継ぐ意思を示したと解釈される可能性があるため、その後に大きな負債が見つかった場合でも、その負債を相続しなければならなくなるということです。 このリスクを回避するためにも、相続手続きを進める前に預金の引き出しなどの行為を行わないことをおすすめします。 とはいえ、葬儀や諸手続きで意外とまとまった費用が必要になるケースもあります。どうしても故人の預金口座からお金を引き出したい場合は、どうすればよいでしょうか。