【バドミントン ジャパンオープン】山口茜が4度目のジャパンオープン制覇、最多記録に並ぶ
ダイハツ・ジャパンオープンは、8月25日に横浜アリーナで各種目の決勝戦を行ない、日本勢では女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)が、2-0でブサナン・ンバルンパン(タイ)を破り、2年ぶり4回目の優勝を飾った。 【フォトギャラリー】全国中学校バドミントン2024 中学生たちの煌めき 熱戦<4> 大会の最終試合だった。ブサナンが入場したあと、会場のモニターには「精一杯、頑張ります。一緒に楽しんで、一緒に戦ってください」と話す山口のメッセージ動画が映し出された。山口が少し緊張した面持ちで入場してコートに入ると、まだ試合開始前のウォーミングアップで羽根を打っている段階から「山口、1本」、「茜、1本」と4569人の大観衆からコールが響いた。試合後、山口は、この声援について「泣きそうな気持ちになった」と話している。 ブサナンのサービスで始まった第1ゲーム。山口は積極的にネット前へ球を沈め、主導権を握った。サイドステップからのクロスドロップなど、相手に球筋を読ませない攻撃も披露した。相手がネット前に出てくれば、スピードのあるクリアーで背後を急襲。相手がヘアピンショットを仕掛けてくれば、クロスネットでやり返すなど、試合のペースを渡さなかった。11-4で折り返す上々のスタートを切ると「自分から積極的にプレーできて、ずっと自分が主導権を握りながら、どんどん、もっといいプレーをしようという前向きな気持ちでプレーできた」と話したとおり、勢いを止めずに21-11でゲームを先取した。 第2ゲームになると、積極的に相手を動かす山口に対して、ブサナンのミスが目立つようになった。ブサナンは、前日の準決勝が不戦勝。体力面では優位と思われた。しかし、山口のラリーは、テンポが早く、予想外のコースを突かれるため、あっという間に心身両面のスタミナを奪われた。状況を立て直そうと強いクリアーを打つとバックアウトになるなど、対抗策が見つからないまま、山口が11-7のリードで折り返す展開となった。 日本で行なわれる大会では、静けさの中で時折、拍手や声援が聞こえてくることが多いが、この日は山口を後押しする声援が最後まで止まらず、背中を押されるように高い集中力で相手を揺さぶる山口に対し、ブサナンは明らかに息があがり、コート上では荒くなったブサナンの息づかいが聞こえていた。試合は、山口のペースで進み、最後はブサナンのミスショットで21-10。山口がストレートで勝利をおさめ、この種目で史上最多タイとなる4回目の優勝を飾った。 試合後には、記者会見場に向かう山口を一目見ようとするファンが通路に押し寄せた。祝福の言葉を受けながら会見場に入った山口は、4度目の優勝について「とてもうれしいです。自分のことながら、同じ大会で4回も優勝するなんて、すごいなと思います」と笑った。 今大会は、パリ五輪直後のため、当初のエントリーから有力選手が多く欠場する形にはなったが、銅メダルを獲得した混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)や女子ダブルスの志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)をはじめ、パリ五輪に出場した日本代表選手は、調整不足の中でも試合に出場。彼らの健闘が大会の盛り上がりをつくり出した。その中で最終日まで勝ち残った山口が、大観衆を楽しませ、見事な優勝で大会を締めくくった。
取材・文/平野貴也 構成/バドミントン・マガジン編集部 写真/黒崎雅久