「中国ビザ免除」再開で現地駐在員は虎視眈々…”本番アリ”の店で接待も!”本帰国直訴”の修羅場と化す、ヤバすぎる「出張アテンド」現場
出張者へのアテンド経費が温存されるワケ
ただでさえ円安が続くなか、日系企業の経費は切り詰められている。前述した某自動車完成車メーカーの現地法人総経理(当時)は日本の新聞購読すら自費だった。「単価を削るだけでなく、経費のセル(項目)が増えるのが嫌がられる」(同)のが、伝統的な日本式の経費削減であるためだ。 にもかかわらず、出張者のアテンド経費は温存される。なぜか。アテンドにかかった経費のうち、都合の悪い部分や予算超過分は、日本からの出張者が出張経費として帰国後に精算する。 すると、現地法人の帳簿に残るアテンドにかかった経費は、減ることはあっても増えることはない。少なくとも、現地法人の予算枠は増えていないという体裁は保てる。 「今回は、こっちもちにするから」と出張者が伝えるだけで、現地駐在員はすべてを悟る。要するに「カネは払うから、しっかりアテンドしろよ」というワケだ。 「シャープを買収した鴻海(フォックスコングループ/台湾系EMS企業)が真っ先に着手したのが、アテンド経費です。出張者の前日入りを廃止し、社用ワゴン車を空港に迎えに行かせ、工場内の宿泊用施設で寝泊まりするようにしました。たったそれだけで年間数億円も削減したそうです。 かつて自分たちの納入価格を叩きまくっていた連中が、会社の経費で飲み食いするなど言語道断だったのです。そんな半端な裏技が許されているようでは、日本企業の苦戦はまだまだ続くでしょう」(上海在住コンサルタント)
同じ釜の飯を喰った上司に「本帰国を直訴」
買収によって悪習慣を変革できた鴻海ならまだしも、無差別殺傷事件に耐え、「黒革の手帖」を後生大事に抱えてきた日本人駐在員は、上意下達のジレンマから容易に抜けだせない。 東京商工リサーチ(TSR)が10月上旬に実施した企業向けアンケート調査によると、8割以上が駐在員へ注意喚起をしただけであり、新規駐在の停止や家族の帰国を促す企業は、ごく一部の大企業に留まっていることが明らかになった。 著者のインタビューに身の危険を感じながら答えてくれたベテラン日本駐在員たちは、注意喚起など“遺憾コメント”より役に立たないことを重々承知しているだけに、「いざとなっても日本の外務省のように、会社も自分を守ってくれない。今回ばかりは、言いたいことを言わせてもらう」と口を揃えていた。 中国に在住する著者旧知の日本人に、本帰国について質問してみた。 「現地採用の日本人に本社採用をチラつかせるのは、駐在員の常套手段。あと1年あと1年…と駐在期間を伸ばすは日本側の十八番です。どちらも詐欺のようなもの。家内が中国人であることは理由にならない。日本企業ならではのロイヤリティを求めるなら、相応の待遇改善を求めます」(広州・50代前半) 「長女が小学生に上がるので、すでに日本での転職活動を始めています。しっかり退職金も頂戴します。日本側は“経営の現地化”を10年以上唱え続けていますから、自分なんて要らなくなるはずです。かつての上司は皆、本帰国したのだから、私はこの国で老後を迎えたくありません」(上海・40代後半) 「うちの元上司で、深圳の物件へ個人で投資をした社員がまだ本社にいるんです。3人で1億円以上儲けたはずです。彼らが定年退職しないうちに、本社に戻してもらいます。まだ私は彼らの元カノが経営する日本料理店の常連ですから、逃がしませんよ」(深圳・40代後半)