懐かしの純喫茶風ソファを採用したクルマとは? バブルの香りが漂うインテリアにいま注目が集まっています!【カタログは語る】
息をのむほどの高密度な室内空間
代表的な車種として、まず日産「ローレル」が挙げられる。カタログでいくつか見ていくと、3代目(C230型)ではボタン留めをしたルーズクッション風のシート。写真は2800SGLのものだが、当時、クルマでここまでやるのか! と話題になった。ローレルはハイオーナーカーの元祖でもあり、初の4ドアハードトップの導入に合わせてチカラの入った企画だったのだろう。C230型後期や5代目(C32型)でも、デザインを変えながら同様のシートが設定された。 もう1車種、同じ日産車の「セドリック」/「グロリア」(Y30型)のシートも、前出のローレルよりも上級クラスのクルマだっただけに、なかなかのゴージャスぶり。写真はグロリアの4ドアハードトップV30ターボ(とセドリック 4ドアハードトップV30Eブロアム)のものだが、よく見ると柄入りの表皮で、それをダイヤ柄に織り込んで仕上げている。なんとも重厚な色合いと趣で、同世代のセドリックも色合いは共通しているが、グロリアとは別のパターンで仕立てられていた。 一方で、これぞ昭和な純喫茶&ラウンジのイメージだったのがトヨタ「マークII」。写真のカタログは1984年に登場した5代目の4ドアハードトップのものだが、ワインレッド(バーガンディなどと呼ぶ人もいた)の鮮烈な色と、ルーズクッション風のシートパターンは、これもまたゴージャスぶりがストレートに伝わってくる。インパネはじめ内装のトリム類も同系色でまとめられ、息が詰まる……、いや、息をのむほどの高密度な室内空間になっていた。ちなみに内装色はグレードによってブラウン、グレーなども用意があった。
ワンボックスにも純喫茶風内装を採用
そのほか三菱「デボネアV」(1986年)では、22年続いた初代からモデルチェンジ、FF化されラウンジのような広々とした室内空間を得て、ゆったりとしたデザインのシートが与えられていた。シガーライターをオンにすると室内の自動換気がはじまる機能を搭載するところなども本物のラウンジ並みだった。 マツダのフラッグシップサルーンだった「ルーチェ」(1977年)にもワインレッド系のシートと内装の仕様があった。カタログにはボディカラー&シートカラーの組み合わせが載っており、写真のリミテッドではフリーズトーンモケットの表皮が使われ、赤または青の表皮色が採用されていた。 また1980~1990年代には、サルーン系に留まらずワンボックス系などにも波及し、昭和な純喫茶風内装が展開されていた。トヨタ「ハイエース ワゴン」、日産「キャラバンコーチ」(1986年)などの当時のカタログを見返してみると「そうそう、こんなのがあったよなぁ」と懐かしく思い出されるようなページがたくさんある。 思い出したのだが、1980年代初頭に筆者の家族が当時のダイハツ「ミラ」の「キャトレ」という名の限定車に乗っていたのだが、その限定車のシートがワインレッドのモケットで、ホワイトのボディ、ブロンズガラスと、あたかも同時期の人気車、マークIIのごとき仕様だったのには驚かされた。要は昭和の純喫茶風のシートも一時代の人気から用意されたもので、時代が変わり見かけなくなったことで、懐かしく新鮮に目に映るということなのだろう。
島崎 七生人