コンビニより焼肉屋が多い。北海道一の焼肉都市・北見市の「ご当地焼肉」はなぜ旨いのか【北海道旅グルメ】
●北海道随一の焼肉激戦区・北見市で、独自の発展を遂げたご当地焼肉の魅力を深堀りしてきた。
北海道グルメと聞くと、海鮮系のメニューを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。寿司に海鮮丼、プリプリのホタテ、身の詰まったカニ……。北の海で獲れる新鮮な海の幸は最高ですよね。しかし! 実は、北海道はお肉のパワーも侮れません。何しろ、日本でも三本の指に入る“焼肉都市”が存在するほど。 北見市の「ご当地焼肉」の関連画像 その焼肉都市とは、北海道の東側、オホーツク海から車で1時間ほどの距離にある北見です。どれほど焼肉屋が多いかというと、人口1万人あたりの焼肉店の数が全国で3位(1位は長野県飯田市、2位は沖縄県石垣市)、人口約12万人の都市に60軒以上の焼肉店が営業しているのです。 実際、筆者がぶらりと商店街を歩いただけでも、ざっと20軒以上の焼肉屋の看板を見かけました。コンビニの数よりもはるかに多く、歩けば焼肉屋に当たる状態です。
筆者が北見のご当地焼肉に出合ったきっかけは、毎年2月に開催される「北見厳寒の焼き肉まつり」に行ったのが始まり。このお祭り、-10℃近い氷点下の中、北見式の焼肉を味わおうというなんともクレイジーな催しで、毎年約2000人が全国から訪れる激アツイベントです。 焼肉大好きな筆者は「寒さの中で焼肉を食べてみたい!」と参加を決めたわけですが、よく調べてみると、その焼肉こそが「北見焼肉」というご当地グルメでした。せっかく寒い中で焼肉を味わうのなら、しっかり北見焼肉への理解を深めたい。というわけで、お祭りに参加する前に北見焼肉を提供している店に取材に行くことにしました。
白羽の矢が立ったのは、北海道に10店舗、北見に3店舗の焼肉店を展開する北見発祥の焼肉店『味覚園』グループの本店『炭焼味覚園 総本店』。実際に行って噂の焼肉を食べてきたので、その全容をレポートしたいと思います。
そもそも北見焼肉とは何なのか?
『炭焼味覚園 総本店』は、北見駅から徒歩で10分ほどの場所にあります。今回、取材を受けてくれたのは、東京出身で東京育ちの店長・髙橋良之さん。まずは、北見における焼肉の愛されっぷりについて語ってくれました。 「北見の人の焼肉好きには本当に驚かされます。夏になると、家から七輪を引っ張り出して、庭で焼肉をする人が多いんです。あちこちで煙がモクモクと立ちのぼっています」(高橋店長・以下同) ちなみに、北見市に焼肉が根付いた理由は諸説あるものの、かつて国鉄北見駅の裏側に屠畜場があったことが大きな要因だそう。昭和30年代に入ると、当時の旧国鉄職員たちが仕事終わりに仲間とホルモンを食べる文化が定着し、現在の北見焼肉へと繋がっているようです。では、その北見焼肉の特徴とはズバリ何なのでしょうか。 「まず、メインのお肉が豚ホルモンと牛サガリなんです。牛サガリは、ハラミと同じ部位ですが、取れる場所が異なります。ハラミは肋骨の背中側、サガリは肋骨のお腹側です。北見では、この豚ホルモンと牛サガリをタレなどに漬け込まない生の状態で提供しています。それを七輪で焼いて、塩こしょうもしくはオリジナルの生ダレにつけて食べる。これが北見流の焼肉です」 なるほど、豚ホルモンや牛サガリの素材の味を堪能するのが北見焼肉なんですね。一般的に焼肉で提供される内臓系のお肉は、臭みを消すためにタレにつけられていることがほとんど。つまり味つけがされていない北見の豚ホルモンとサガリは、それほどフレッシュで臭みもないというわけです。 なお、店長さんの言う「生ダレ」とは、牛サガリやホルモンに合うよう、野菜本来の旨味や甘味を活かした非加熱の新鮮なタレのこと。これも北見焼肉の特徴と言えます。